無茶振りは成長のチャンス! 計良宏文のクリエイションの原点
縛りがある中で遊ぶのは楽しいが、「テーマは自由」と言われると苦しい
今回出版する「KERAREATION」の中にも書いているんですが、僕の発想のスタート地点はバラバラなんです。「馬のしっぽ」「フィギュア」「天守閣」など、お題となるキーワードやテーマがあれば、そこから連想ゲームのような感じで発展させやすいのですが、何もない状態から生み出すのは結構大変です。自分自身 ˙、「テーマは自由です」と言われるのが一番難しい。何か縛りがあるほうが、そこから発想を転換させやすいですね。テーマがあれば、テーマの中でいろいろと遊ぶことができる。女性像のイメージを膨らませたり、カッコいいとかわいいのどっちに振っていくか考えたりとか。一つ決まると徐々にイメージが固まります。
とっかかりは何でもいいんですよ。たとえば、携帯のストラップを見て、髪の毛で何かできないかなと考えたりとか。日常の中にある、目に映るものから連想させて、イメージを膨らませてみる。大事なのは、“結びつける力”ですね。何かを見て「おもしろかったね」で終わらせず、そこから髪と結びつけて考えてみる。そうすると、新しい可能性が生まれるんです。
昔のデザインを今風にアレンジしたらどうなるのか、日本髪の色や質感を変えたらどうなるのかなど、いろいろと考えてみるのもおもしろいですね。デザインとデザインを組み合わせる、あえて古典的なファッションを調べてみるとか、そうした試みがまた新しいものに生まれ変わっていくのかなと思います。
いくつになっても遊び心を忘れなければ、新しいものを生み出していける
美容師さんのつくるデザインを見る機会もたくさんありますが、美容学生や美容師になりたての人のほうが、発想が豊かですね。経験がないからこそ、誰も見たことがないようなことをやるんですよ。荒削りなんだけれど、おもしろいものが多いです。
一方で、10年、20年やっている人は失敗を避けるようになる。無難な方向に落ち着いてしまうんです。でも、遊び心を忘れなければ、ある程度熟練した技術の中でも、新しいものを生み出していけると思います。
経験を積んでいくなかで、自分の作品をリアルに寄せたり、クリエイティブに寄せたりすることは悪くないのですが、できれば分け隔てなくトライしたほうがいいと思います。自分で自分の可能性を狭めず、幅を広げてほしいと思います。そうすることで、時代が変わっても対応できるし、もしくは時代の流れをつくっていく立場になれるんじゃないでしょうか。
「KERAREATION」には「何のためにつくるのか」という目的を明確にすることからはじまり、最終的にテーマを表現するプロセスを、細かく解説しています。本を見てもらいながら、体を一緒に動かして勉強してもらえたらうれしいですね。最近ではヘアカタログやサロンビジュアルを自分たちでつくっているサロンが多いと聞きます。この本を少しでも参考にしていただいて、オリジナリティのあるものが生まれたらなぁと期待しています。
- プロフィール
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資生堂トップヘアメイクアップアーティスト
計良 宏文(けらひろふみ)
資生堂美容技術専門学校卒業。ヘアケアブランド「TSUBAKI」などの宣伝広告、MIKIO SAKABE、ANREALAGE、SOMARTAほか多数のファッションブランドのショーを手がけるなど、グローバルに活躍。2009年JHAグランプリ獲得。インターコワフュール・ジャパン理事、日本ヘアデザイン協会(NHDK)ニューヘアモード創作設定副委員長、資生堂学園テクニカル・ダイレクター、一般社団法人ジャパン・ビューティーメソッド協会 上級認定講師など、美容業界を盛り上げる活動を展開。
KERAREATION特設サイト
https://hma.shiseidogroup.jp/jp/book/?fbclid=IwAR2mG4bfLmtJ-d_XSoUEHgtsojTEc2aV7qoMRo_DCnSWzOudJbxP6IvAMOE
(文・外山武史/撮影・菊池麻美)