最近の美容業界の教育事情について、ぶっちゃけどう思っていますか? 「あの人に会いたい」美容師×美容師の化学反応  第13回国際文化理容美容専門学校 瀧下克俊さん×GARTE ATSUTOSHIさん

「スマホの中の先生には絶対に負けてはいけない」(瀧下)

 

 

瀧下:学校も同じだね。積極的にコンテストに出る人ははセンスもあるし、努力もするから。もし僕がセンスと技術を磨くことをやめたら、学生に何も言えなくなると思う。自分だけ老け込んで話が合わなくなるようでもいけないし。学校の先生より、スマホで見られる動画の先生のほうがいいよねっていう話になりかねない。

 

ATSUTOSHI:それはそうですね。

 

瀧下先生の作品どり風景。撮影も自ら行います。

 

 

瀧下:オンラインでの学びはもちろん自分自身もやっていて、ありがたいと思っています。でもスマホの中にいる先生には負けたくない。なぜなら、動画で勉強して、それを真似しても、本当にできているかどうかを学生が自分で判断することは難しいから。僕はいつも学生たちの力を目の前で判断できる存在でありたいから、やはり学び続けてなくはいけない。

 

最近だとLECOの内田さんや、biancaの中井さんから直接学べる機会があったり、写真家の松山優介さんには授業をお願いしています。学生だけでなく、僕自身も彼らから学ばせてもらっている。ここ2年でようやく写真を撮れるようになってきたかな、という感じ。教える立場の人が学び続けている姿勢を見せることが、一番の教育だとも思うんだよね。

 

 

ATSUTOSHI:学生時代を思い出したんですけど、僕が学生の許される限界まで残って練習して帰るときに、先生たちが練習している部屋を覗くと、まだ残ってやっているわけですよ。自分ももっとやらなきゃダメなんだって思いましたね。そんな環境で2年間過ごしてきたから、努力することが当たり前だし、努力することを辛いと感じない自分になれたのだと思います。

 

DHKコンテスト競技中の様子。先生も自らの技術を磨き続ける。

 

 

「大事なのはフリーランス の先に何を見据えているのか」(瀧下)

 

 

ATSUTOSHI:ところで、最初にもチラッと話しましたけど、先生は新卒フリーランスのことをどう思っているんですか?

 

瀧下:個人的には、全く推奨はしてない。ハタチの若者が一人でできることの限界ってあると思うから。結局、興味がまだ自分だけに向いているんだと思う。自分のしたい働き方ができないから、フリーになるわけだし。

 

ATSUTOSHI:「自分に合う美容室はない」みたいな感覚かもしれないですね。

 

瀧下:「ないから自分で環境をつくっちゃうぜ」みたいなところもあると思う。どこまで自分をプロデュースして、セルフマネジメントしてやっていけるのか興味はあるけれど…。

 

ATSUTOSHI:国際文化理容美容専門学校で教育を受けて、教育の大切さを知っているはずの子たちが、フリーランスに向かうことが理解できなくて。

 

瀧下:フリーランスの先に、何を見据えているのかってところだよね。「誰かのために」という気持ちがいつ芽生えるのかなって思う。やっぱり、美容師はお客さまあっての仕事だから。今自分がやりたいことだけやるという話だったら心配だね。

 

ATSUTOSHI:僕も心配しているんですけど、先生の「推奨していない」っていう言葉で少し安心しました。もうそろそろ終わりの時間なので、最後に卒業生に向けてメッセージをお願いします。

 

監修する学内ヘアショーで学生たちと

 

瀧下:学生時代の様子を見てきた卒業生、とくに30歳前後のみんなが注目されるようになってきたことがうれしいです。みんなが学生だったころは、一緒になってバリバリ練習して、コンテストにも出て、先生と学生の立場の違いはあるけれど、負けないようにやってきました。やはり、自分が学び、研究して、それを学生に落とし込んでいかないと、結果が出にくいものだと実感しています。しばらくコンテストで結果を出せない時期もあったけど、また学び直して、学生に還元できるようになったので、これからの後輩たちの活躍にも期待してください!

 

ATSUTOSHI:先生、今日はありがとうございました!

 

 

プロフィール

国際文化理容美容専門学校国分寺校 

教員 瀧下 克俊(たきした かつとし)

東京都出身。国際文化理容美容専門学校国分寺校卒業。自分の人生に好影響を与えた少年野球のコーチ、中学時代の塾講師、甲子園経験のある野球部顧問などに出会い、自らも指導者の道を目指す。美容科教員として活躍しながら、2015年 Japan Cupウィッグ部門シルバーアワード、2016年 Japan Cupメンズモデル部門 第3位、2018年 Japan Cupウィッグ部門 敢闘賞、由藤秀樹賞、2019年 DHK festivalアートスタイルコンペティション部門優勝など、多数の受賞歴を持つ。

 

GARTE 

代表/ATSUTOSHI/池田 充聴(いけだ あつとし)

1992年8月21日生まれ。北海道出身。国際文化理容美容専門学校国分寺校卒業後、都内有名店で1年間のアシスタントを経て、イギリスに留学。2014年に弱冠22歳で「GARTE(旧・GRADUATE)」の代表として、東京・代官山にサロンをオープン。その後、24歳で表参道に拡大移転。現在ではサスーン ヘアカットコンテストで、全国入賞を4年連続(そのうち優勝2連覇)という偉業を達成。国内はもとより海外でも、セミナー講師として活躍している。

 

(取材・文/外山武史  撮影/菊池 麻美)

 

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