ブリーチの神様・joojiさん。ハイトーンカラーに情熱を注ぎ込んだ彼の人生とは? —ヘアカラーのプロフェッショナル・中村太輔さんより
小さなプラスチックスプーンでカラーを調合する繊細さ
もう1つ、彼について特筆すべきなのは、塩基性カラーへのこだわりから生み出される透明感のあるパステルカラー表現。やったことがある人はわかると思うのですが、塩基性カラーを薄めて、思い通りの色を出すことほど難しいことはありません。それをjoojiさんは、どんな色でもコントロールしきって、ひとつの頭の上で、何色もミックスしてヘアデザインをつくるのです。
実際彼は、コンビニのデザートについてくる小さなプラスチックスプーンをつかって、ミリグラム単位でヘアカラー剤を調合していました。それがどれほど細やかなことか。joojiさんのレベルでハイトーンカラーをコントロールする人は、後にも先にもいないだろうと感じています。
継承、伝達、育成。joojiさんの「第2章」
「第2章」とは、2016年頃からjoojiさんが自らスタートさせたプロジェクトです。
これまで突き詰め、表現してきたブリーチと塩基性カラーの理論を、次世代の美容師に伝授していこうということでスタートしたものだと聞きました。長年ノートに書き綴ってきた言葉の発表、ワークショップの開催、2人で美容専門誌の企画を行う計画もありました。ブリーチが好きで、ヘアカラーに魅せられた、1人のフリーランスカラーリストが、業界全体に影響を与えていこうとした矢先の早逝だったのです。
ハイトーンカラーの時代はまさにこれからというところ。ファイバープレックスなどの新しい毛髪強化システムが登場し、ブリーチにつきものだったダメージや頭皮への負担の問題にも、解決の兆しが見え始めています。数年後にはまた新たな染料も登場することでしょう。joojiさんが活躍するべき時代は本当に、本当にこれからだったに違いなく、悔やまれる思いはつきません。