髪の毛を失った子どもたちへ無償でウィッグ提供する団体の実態-NPO法人Japan Hair Donation & Charity(JHDAC)の活動とは?-
みなさまはJapan Hair Donation & Charity(JHDAC)という団体をご存知でしょうか?具体的にどんな活動をしているのか、もしくは名前すら知らない方もいるかもしれません。
JHDACは病気や事故で髪の毛を失くした子どもたちに、無償でウィッグを提供する団体です。今回は、事務局長の渡辺貴一(わたなべきいち)氏に活動の内容や理念についてお伺いしました。
髪を使って社会に恩返しがしたい
-まず、JHDACについて教えて下さい。
「NPO法人JAPAN HAIR DONATION & CHARITY(JHDAC)は、市民の皆さまからのヘアドネーション(髪の寄付)を受付けている日本で唯一のNPO法人です。
みなさまからの寄付によって制作されたフルオーダーメイドのウィッグは、小児癌やその他の疾病、先天性及び心因性の脱毛症・無毛症、不慮の事故、その他さまざまな理由により髪を失ってしまった子どもたちに無償で提供しています。
JHDACは、『社会性の復権』をサポートし、子どもたちの生活や人権を守ることを目的として設立された団体です」
-設立のきっかけは何だったのですか?
「誕生は2008年。当初は自分を含めて現役美容師が三人いたのですが、自分たちのサロン“THE SALON”を立ち上げる際に『美容師という仕事が社会で新しい役割を果たせないか』と考えたのがきっかけでした。欧米では定着している“ヘアドネーション”が日本では、プロの美容師にすら認識されていないという現状があります。私たち美容師の仕事は、髪があるからこそ成り立っています。だからこそ、髪を使って社会に恩返し出来ないかと考えたのです。
ヘアスタイルを変えると気持ちまで明るくなった経験は、みなさまあると思います。髪の毛はそれだけ人のメンタルに大きな影響を与えているのです。美容師は、基本的に髪のある人を相手にしますよね。それでは、髪のない人には無力なのか?何か提供できないのか? と考えたときに、医療用ウィッグの無償提供にたどり着きました。
私たちの理想とする社会は、必ずしもウィッグを必要としない社会です。病気や事故で髪をなくしても、クラスメートから奇異な目で見られることなく、これまで通り友だちとして接してくれる、そんな仲間や友だちがいる学校。ウィッグを身につけなくても、電車の中でジロジロと見られない社会。いろんな髪型が個性として認められているように、“髪がない”ことも1つの個性として受け入れられる、そんな成熟した社会を目指して、微力ながらも活動を続けて行こうと思っています」