話題のミニシアター映画『ガザの美容室』をLECOが鑑賞。改めて思う、美容のパワーとは?
美容ができること、もたらすパワーとは?
−日本には戦争こそないものの、自然災害が多いですよね。そういった場面に遭遇して切羽詰まったときに美容師ができることってなんだと思いますか。
小林・浅野:難しい……。
内田:う〜ん、難しいね。東日本大震災のときに思ったんだけど、どういう状況でも女性は「おしゃれでいたい、きれいになりたい」って気持ちがあるんだよね。ガザの女性たちと同じように。美容師は、そのおしゃれをしたい原動力を手助けできる職業。ハサミ一丁、体ひとつで外見をブラッシュアップできて、勇気を与えられるのは美容師ならでは。そういう気持ちを忘れずにお客さまと向き合っていくってことかな。
−『ガザの美容室』では、扉一枚隔てた戦況下の中でもヘアセットを続けたり、マニキュアを塗り直したりと、美容を施すことで自我を保とうとする女性が映し出されていましたが、みなさんはどんなときに美容のパワーを感じますか?
小林:僕、最近女性の友達に美容室ってどんなところ?って聞き回ってるんですけど、みんな『行くだけで元気になる場所』って言うんです。ちょっと施述しただけでも髪も心もスッキリするから行くんだよ、って言われてから、美容師の視点が変わりました。
昔はせっかくくるんだから大胆にイメチェンした方がいいでしょ! と思ってカラーやカットをすすめることが多かったのですが、最近はリタッチだけでもお客さまは気持ちがリフレッシュして喜んでくれるんだと気がついたんですよね。ちょっとした施術もより気持ちを込めてするようになりました。
『ガザの美容室』にきてた女の人たちは日常的に紛争が起きる状況下だし、余計リフレッシュ感強いんじゃないかな。仲が良いわけじゃないけど、たわいもない思い思いのことを喋れる時間ってすごく貴重なんだと思います。
浅野:美容のパワーを感じるのは、私もメンタルケアの手助けができたときですね。友人が家族関係のことで参っていたときに、サロンにきてくれて、私は話を聞いて髪を切るだけなんですけど、「話したいからきたし、癒されたよ」と言ってくれて、美容師ができることは技術だけじゃないんだなと思ってうれしかったですね。
『ガザの美容室』の女の人はみんな環境的に余裕がないけど、あそこへ行ってホッとすることも美容のパワーのひとつなのかな、って思います。
内田:今、このデジタルな時代の中で美容師ってすごくアナログな感覚ですよね。お客さまと顔と顔を向かい合わせないとできない仕事で、最近は改めて美容師のアナログな感じがすごくいいと思っています。
お店を出して、いろんな人に応援してもらっている今、髪の毛を触ること、ブラッシュアップすることで自分もお客さまからパワーをもらえているな、と思っています。
自分が髪を手掛けさせてもらうことで、今までお客さまが叶えられなかったこと叶えているし、お互いのハッピーを共有させてもらっている。お客さまにはきてくれてありがとうって改めて思っています。直接会ってお話しして、そんなアナログなやりとりに喜びを噛み締めているところなんです。
<公開情報>
『ガザの美容室』
2018年6月23日(土)より、アップリンク渋谷、ほか全国順次公開中
監督・脚本:タルザン&アラブ・ナサール
出演:ヒアム・アッバス、マイサ・アブドゥ・エルハディ、マナル・アワド、ダイナ・シバー、ミルナ・サカラ、ヴィクトリア・バリツカほか
字幕翻訳:松岡葉子
提供:アップリンク、シネ・ゴドー
配給・宣伝:アップリンク
(2015/パレスチナ、フランス、カタール/84分/アラビア語/1:2.35/5.1ch/DCP)
- プロフィール
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LECO
代表/内田聡一郎
2018年3月1日に自身が代表となるヘアサロン「LECO」をグランドオープン。好きな映画はSF。近未来感のある作品が好きで、特に80~90年代のフューチャー感のある世界観が好き。
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LECO
スタイリスト/小林 賢司
山野美容専門学校卒業後、2018年2月、内田聡一郎氏が代表・トップディレクターの『LECO』にオープニングスタッフとして参加。同時に、スタイリストデビュー。現在はイラストレーターとしても活動。LECOきっての映画好き。週3回、営業後に見るのが日課。最近はもっぱら戦争・宗教映画にハマっている。
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LECO
ヘアメイク・スタイリスト/浅野絢美
フリーランスのヘアメイク・美容師として活動後、2018年2月、内田聡一郎氏が代表・トップディレクターの『LECO』にオープニングスタッフとして参加。LECOの撮影にまつわるヘアメイクを担当する。映画は邦画をよく見ていて、洋画を見たのは久しぶり。
(取材・文/高橋優璃 撮影/菊池麻美 撮影協力/アップリンク渋谷)