エンタメ業界を支える、アデランスの芸能用ウィッグって?
芸能用ウィッグと言う言葉を聞いた事はありますか? 舞台やミュージカル、映画やドラマで使用されるウィッグの事です。実はその芸能用ウィッグの歴史を築いてきたのが(株)アデランスということを知っている方は多くないのではないでしょうか。
そこで、アデランス文化芸能部門、服部真樹さんにアデランスの芸能用ウィッグのお話をお伺いしてきました。
撮影:堀勝志古
アデランスの芸能ウィッグの歴史は1983年まで遡るそう。
「イギリスからミュージカル『キャッツ』が日本初上陸をするということで、衣裳や舞台装置など日本国内で調達をしなければなりませんでした。そのリストの中には俳優さんがかぶるウィッグももちろん入っていました。しかし、1980年初頭にこのようなミュージカル用のウィッグを作っているところなんて日本にはなかったようでさまざまなところにアタックをしても断られて行き着いたのがアデランスだったそうです」
なぜアデランスにミュージカル用のウィッグを依頼したのか。それは当時一世風靡したCMがきっかけだったという。
「アデランスはお客様用電話番号の下四桁が“9696(クログロ)”なんです。当時アデランスのCMではこの番号を売りにしたCMが世間で話題となっていたんですね。そのCMを見た劇団四季様の技術スタッフがダメもとで、その“9696”に電話をかけてきたのがはじまりだったんです」
増毛・カツラの分野ではトップを走るアデランスも、舞台、しかも2時間以上歌って踊るミュージカルに対応できるウィッグを作れるのか。最初は社内でも戸惑いが広がったという。
しかし、今まで蓄積したカツラの技術を舞台にも活かせるのではないかということと、持ち前のチャレンジ精神でアデランスの新たなチャレンジがはじまった。
「『キャッツ』はご存知の通り、猫が主役のミュージカルですよね。動物らしさを表現するために、ヤクというウシ科の動物の毛を使っています。またウィッグは猫の形でも、人間の耳が出ていると猫には見えませんよね。しかし覆ってしまうと音楽が聞き取りにくくなってしまうので耳を覆うベース部分は頭頂部と素材を変えるなど、試行錯誤をしました。
日本公演を行うにあたり、元のイギリスのオリジナルキャラを生かしつつ、日本固有の猫をデザインも織り交ぜたりもしているんですよ」
撮影:堀勝志古
これまでのカツラ技術を駆使して、さまざまな改良を重ね、舞台初日を迎える。その後、『キャッツ』の人気は現在まで続き、日本中で愛されるミュージカルとなる。「余談ですが、初演当時に作ったウィッグも改良や修理を加えていますが、まだ今でも使われているベースもありますよ」というのだから、当時から技術はトップクラスであることが伺える。
「そのタイミングで芸能用ウィッグ専門の“文化芸能部門”を開設しました。当時はまだ舞台関係者しか知られていない存在でしたが、俳優さんからの指名を受けたりしているうちに、ミュージカル、舞台だけでなく映像の世界も手がけることになっていったんです」
『キャッツ』の成功を受けて、劇団四季で『オペラ座の怪人』の公演が決まった際、再びウィッグ製作の依頼を受ける。
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