trip salon un. 湯浅一也さんと櫻庭太さんが伝えたいこと 「訪問美容師だけでなく、誰もが介護の知識を身につけるべきです」
周囲から成功しないよって言われて悔しかった
-普通のサロンとは業務の流れが違いますよね。どんな流れで進めているんですか?
櫻庭さん「お客さまから予約が入ったら、ご自宅や施設に伺います。当日はシャンプー台などの機材を訪問先に運び、アロマをたいて、音楽を流し、まるで店舗サロンにきたかのような環境作りをします。それからカウンセリング。そして施術です。ここで終わりでなく、きちんと掃除をして終了です」
湯浅さん「特にカウンセリングはしっかりとしています。普通のサロンでは目の前にいるお客さまにご満足頂ければいいんですが、訪問美容は違うんです。お客さまだけではなく、お客さまのご家族、介護するヘルパーさんやスタッフさんとの連携も重要になってきます。お客さまは長い髪を希望していても、ヘルパーさんは薬を塗るから短い髪型が介護をしやすいという場合があるんです。その方の身体状況や日常生活に合わせたスタイルを追求することが、訪問美容ならではです」
-訪問美容をスタートした当初は苦労したと聞きました。
櫻庭さん「最初はお客さまがいなくて大変でした。毎日スーツを着て営業回りをしていました。お金もなく、平日は営業活動をして土日はバイト」
湯浅さん「周囲にも言われました。成功しないよって。それが悔しかった。櫻庭のいうように最初の1、2年は苦労ばかりでした。でも僕らの提供しているサービスは絶対に必要とされると信じていました」
櫻庭さん「僕らが初めて取れた営業は、精神病院でした。暴れる方もいたり、部屋から出られない方もいて、そんな中で施術する事になりました」
湯浅さん「危ないからハサミを隠さないといけないんですよ。それでも髪をカットしなくてはいけなくて」
櫻庭さん「だから最初の頃は施設スタッフさんにお客さまの身体を押さえてもらって、髪を切っていました。でも今はそれがなくなりました。僕らがお客さまを落ち着かせることができるまでになったんです」
湯浅さん「お客さまに話しかけて、安心してもらうんです。そして私は、施術前にお客さまの肩に手を当てて安心していただけるように心がけております」
櫻庭さん「美容室にくるお客さまはジッとしてくれるのが普通ですよね。でも訪問美容は違います。寝たままの状態で切ったり、身体が動く中で切ったり…」
湯浅さん「僕らはどこへでも訪問します。感染症の施設でも、集中治療室の中で切ったこともあります。それが訪問美容なんです。そういえばこの前、精神病院に入院していたお客さまから“退院しました、お世話になりました。”という報告を受けました。こういうのは本当にうれしいですね」
-まるでお医者さまのようにお客さまを治しているんですね。
櫻庭さん「そうです。なかなか美容室に行けなかったお客さまが、髪を切ることで活き活きと輝くんですよ。特にご高齢の方はみるみるうちに若返りますね」