二人は同級生! 性格が正反対の若手美容師が語る、イマドキの若者論
若者の個性を認めながら伸ばすのが、イマドキの教育
―ATSUTOSHIさんはオーナー、米田さんは副店長という立ち場で若手のスタッフの教育のみならず、美容師を目指す学生からも相談を受けることが多いと思いますが、今の若者についてはどう思っていますか?
米田 やりたいことや好きなことがないという若者たちが多くなったというのはよく聞きますが、僕は人の本質はいつの時代でも本当は変わらないんじゃないかと思ってます。好きなものを好きと言える時代に、それを口にしたがらない若者がいるのはなぜかと言うと、「不安だから」に尽きると思うんですよ。では、その不安感はどうして芽生えるのかというと……たとえば、僕たちは高校生のときはガラケーの世代で、好きな女の子にメールを送ったら、帰ってくるまでドキドキだった。
ATSUTOSHI 『新着メール問い合わせ』ね! 5分に1回のペースで(笑)
米田 そうそう。それで返事がこなかったり、わからないことがあったときって、「次の日学校で聞いてみよう」とか、待っていることしかできなかった。でも、今はスマホの時代で、“求めた答がすぐに返ってくる”。「髪色どうしようかな、インスタで検索してみよう」とか、「誰かと連絡取りたいな」ってときはすぐにアクションが起こせる。そんな時代に生きているからこそ、“先が見えない未来”に不安になってしまう。なぜなら、いままで答えを簡単にもらえる中で生きてきたから。急に『自分の人生』という先がなかなか見えない大事な出来事を考えたら、不安になるのは当たり前。だからこそ、先輩が、遠い将来と一緒に一歩先も照らしてあげるのが、一番の近道だなと思っています。
ATSUTOSHI でも僕が美容学生のお客さんと接している中で感じているのは、やりたいことや好きなことが決まってるけど言えないんじゃなくて、本当に決まっていない子もかなりいるということ!
米田 たしかに! かなりいるね。
ATSUTOSHI 東京で美容師をやりたいのか、地元で美容師をやりたいのかすら決まっていない子もいるよね。
米田 そういう時は、どうアドバイスしてる?
ATSUTOSHI ワイワイ美容師をやりたいのか、それとも日本一って言われたいとか、この美容師にやってもらいたいと思われたいのか聞くね。「日本一だったら東京の方がいいけど、ワイワイだったら地元だよね」って。なんでワイワイだと地元がいいかというと、友達が来てくれるから。友達が美容室に来ると、思い出話とかできてめちゃめちゃおもしろいんだよね。でも本当は、何をやりたいかという本質だけは自分で決めて、それを大人に投げかけると、実現に一歩近づく答えをもらえるんじゃないかな。
あと、今時の子は不安が大きいぶん慎重。そして実はその慎重さの中にもいいところがあるんだよ。たとえば、わからないままにカラー剤を作られるよりは、聞いてから作ってくれる方がありがたかったりする。一方、聞かずに適当に作ったカラー剤がすごくいい色になることもあるかもしれない。その両方を個性として認めてあげるのが重要。その認められた個性はめちゃくちゃ伸びるから。積極的なときも慎重なときも、その時々で褒めるところを見つけながら要望を伝えるようにするの。4年間やってきて、これは本当に実感した!
米田 へえ! それも逆で、僕は技術のミスは純粋に怒る。マジメな話、技術で失敗したことで、好きな人に告白しようとしていたお客さまが髪型に自信が持てなくて、告白をあきらめてしまうことがあるかもしれない。僕たちはそのくらいお客さまの人生を背負ってるから、ミスは許されないってことをしっかり伝えるようにしてる。
若者について、スタイルについて、教育について、別々の考えを持つお二人ですが、若者世代をより理解し盛り上げたいという気持ちは同じ。これからもそれぞれの立場から美容業界に若い力を育ててくれそうです。
- プロフィール
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GRADUATE
代表/池田 充聴(いけだ あつとし)
国際文化理容美容専門学校 国分寺校卒。都内有名店で1年間のアシスタントを経て、渡英。ヴィダル・サスーンアカデミーの教育を受けた後、ヴィダルサスーンの美容教育コンサルタント・サスーンスクールシップ&サロンシップグローバルコーディネーターの石井曜子先生の力を借りて前途したコンセプトのもとでGRADUATEを任されることに。原宿らしいエッジィなスタイルと鮮やかなカラーリングを得意とするスタイリストとして知られている。
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OCEAN TOKYO Sunny
副店長/米田 星慧(よねだ せいえ)
お客さまと髪だけではなく「心と心で繋がる美容師」をテーマにカット中での接客はもちろん、SNSを通してお客さまとの“本当の意味で密なコミュニケーション”を武器に厚い信頼を得ている。本当の「お客さまとの信頼」から生まれる【似合わせ】と、圧倒的なカラーリング技術により2018年3月には、わずか2週間で47都道府県のお客さまを施術するという偉業を成し遂げ、全国からのファンが後を絶えない。鋭さの中にも甘さが光るモテ髪を得意とするスタイリストとして知られている。
(取材・文/須川奈津江 撮影/菊池 麻美)
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