ユーザーと企業を結ぶクチコミの力 株式会社アイスタイル代表取締役社長 兼 CEO 吉松徹郎スペシャルインタビュー
クチコミとは、期待値とのギャップ
-@cosmeでは、誹謗中傷が書き込まれるといったトラブルがほとんど見受けられませんね。
ユーザーには投稿されている内容へのコメントは書かず、商品の感想だけを書いてもらえるように注力してきました。
基本的にクチコミというのは、期待値とのギャップです。高級ブランドの商品と、100円均一ショップの商品とを比較するというのはナンセンスですよね。ここで語られるべきなのは、どっちが良いかではなく、その商品単位での個人の感想だけ。100円で買った商品が「思ったより良かった」なら★をたくさんつければいいし、好きなブランドの商品が「期待していたよりもイマイチだった」なら★を少なくすればいいんです。だから@cosmeでは0〜7個の★とコメント欄のみで、レーダーチャートはありません。
こういった設計思想と同時に、現在も24時間365日、人の目とシステムでのチェックをしています。
-これほどの製品数とコメントを人的にチェック!?
そうですね、これは開設時からずっと変わらずに。具体的には、商品評価以外のコメントを消す、ということをしています。「このリップの○○が良くてすごく気に入りました。彼も喜んでくれています。そしたらカレが毎日とってもラブラブで…」なんてコメントがあったとしたら、最後の何行かだけを削除していいか、ユーザーさんとコミュニケーションを取るんです。コメントそのものを削除するのではなくて、文章単位で細かくチェックしていく。そうすると、@cosmeの“文法”が出来上がります。
-媒体の色が出来るようなイメージですね。
たとえば2chに書き込んでいる人は、みんな2chっぽい文章になりますよね。これは自分の書き込みに違和感が出てしまうのを回避するためなんです。それと同じで、だんだん@cosmeに書く人は@cosmeっぽい文章になっていく。いずれそうなっていくだろうな、と思いながらメンテナンスをしてきました。
“唯一無二”があれば必ず生き抜ける
-SNSの台頭により、検索すれば多様なクチコミが見つけられるようになりました。@cosmeの今後についてはどのようにお考えですか?
クチコミサイトが1つである必要は全くないと思うんです。検索したときに、Twitterやfacebookはもちろん、それ以外にもこれからどんどん出てくると思います。ユーザーは検索をかけた時、恐らく1箇所だけではなく複数箇所を見て判断しますよね。その中のひとつにさえ残っていれば、サイトは必ず生き残っていきます。
ユーザーは書く場所が分散していき、アグリゲート(=集約)するアルゴリズム(=処理の方法)など、技術も進化する。しかも実名でのクチコミも多くなってきました。そうなった時に、匿名でクローズドの場所で書くクチコミの価値はあるのだろうか……これは社内でもさんざん話し合いました。
-@cosmeは会員制、ニックネームでのクチコミですね。
はい。しかし、逆に考えてみると。たとえば、多くのユーザーが商品ごとにつけた★の数とその平均値というものは、@cosmeにしかないもの。たとえ“googleコスメ”というサービスが出来たとしても絶対に表示されません。つまり、@cosmeだからこそ、という集合値を数値化していくような仕組みがあればいいということ。こうして常に、ユーザーがクチコミを見るときの選択肢の1つに残れば、@cosmeとしてのブランディングは確率していけると思っています。