ユーザーと企業を結ぶクチコミの力 株式会社アイスタイル代表取締役社長 兼 CEO 吉松徹郎スペシャルインタビュー
開設から15年。会員数300万人・クチコミ数は1,000万件を軽く超え、名実ともにナンバーワンの美容系総合ポータルサイトである『@cosme』。“クチコミマーケティング”ビジネスの第一人者である株式会社アイスタイル 吉松徹郎(よしまつてつろう)氏にお話を伺いました。
@cosmeはメディアではなく、情報共有の“場”である
-「@cosme」をスタートさせるに至った思いをお聞かせください。
当時(=1999年)はインターネット利用者もまだまだ少ない時代。しかも企業側からの情報提供がメインで、ユーザー側の情報交換の場としての利用はほとんどありませんでした。しかし、化粧品は特にクチコミで売れるものであり、自分に近い人をどうやって探せるかが重要です。そこで「掲示板」とは違う、商品を軸にしてユーザーが自分に必要な情報を得られる場を作りたいという気持ちがありました。
その一方で、ビジネス視点も強くあって。これまでは、化粧品メーカーやブランドは自社のお客様の情報は持っていても、他社のデータは持っていなかった。でも本当に知りたいのは、他社の製品を買ったお客様が「なぜその商品を買ったのか」「どうして別のブランドを選ばないのか」「どうしたら他社商品に興味を持つか」という点ですよね。これらの質問が出来てこそ本当のマーケティングです。
どうやって「自分以外のお客様と出会う場所」を作ろうかと考えたときに、“クチコミ”が効いてくるだろう。そう思って、商品を軸にしたクチコミデータをみんなで共有できる場を作りたくてスタートさせたのが、「@cosme」というサイトです。
-@cosme = 情報交換の場所、という感じでしょうか。
我々は開設時から、メディアを作るというよりも、ユーザーと企業が必要としているデータとをどうつなげるかを考えてきました。
たとえば、@cosmeの競合サイトがあるとします。本来は、自社で収集したデータを競合サイトに提供なんてしませんよね。しかし我々は@cosmeが持つ情報を提供します。さらに、競合先で収集したユーザーの声のメンテナンスも当社で行いますよ、とサービス連携を図ります。……その結果、化粧品メーカーからすれば、当社にさえ情報を渡しておけば多方面に情報が行き渡ると認識する訳です。いかにオンリーワンのプラットフォームになっていくかを徹底的に考えながら設計してきました。
- クチコミサイトとしてはもちろん、このような情報の相互流入に関しても先駆けですね。
現在はいろいろなサイトがクチコミを取り入れていますが、各サイト側で商品を登録し、それに対してユーザーがクチコミを投稿していくという流れがほとんどです。しかし@cosmeの場合は、ユーザーが自由に登録した商品について、我々がメーカーに写真提供を依頼します。もしも登録時の商品名にバラつきが出たとしても……たとえば、英数字の全角・半角の違いや、アラビア数字とローマ数字の違いがあった場合、同じ商品であってもデータ上は別のものになってしまいますが、これを綺麗に整理していくのが当社の作り方です。
このように、登録の間口を広げることで、より強い(内容の濃い)データベースになっていると思います。書く場所は分散させて、見る場所は一箇所に、使えるデータとして集約しておく。それでこそユーザー視点で使い勝手のいいものだと言えるでしょう。