【apish坂巻哲也さん追悼企画】創業から26年、共に歩んだ3人が語る「美容の父が教えてくれたこと」
お客さま目線を忘れないプロデューサー
編集部:坂巻さんは、美容師の社会的地位を上げたいという想いを持った人でしたね。最初に声に出し、メディアを通じて発信していたのも坂巻さんだったと記憶しています。
佐藤:昔から「美容師はすごい仕事だから主役じゃなきゃ」という考え方でした。ただ、あの頃は裏方に徹するのがかっこいいとされていた時代だったので、通販番組のQVCに坂巻が出るようになった時も「美容師が表に出るな」みたいなムードが強かったんですよ。
ひぐち:「美容師は技術で勝負」という風潮があったので、サロン店販に注力するのは邪道だ、みたいな。周りからも「美容師がシャンプー作るなよ」とか、あれこれ言われていたみたいです。でも人からどんなに叩かれようが、”自分は自分”という強さがありました。人と違うことをやりたがりましたし、先見の明があったので時代の流れより一歩進んだことをやっていましたね。
佐藤:「デジパ(デジタルパーマ)」の名付け親は坂巻ですからね。テレビ番組で言い切ったのが始まりなんですけど。「エアウェーブ」もそうですし。
ひぐち:パーマの毛先を逃したくて「円錐ロット」も作りましたし、某ブランドのドライヤー開発にも坂巻が入ってますしね。
宮下:世の中に出ている人気の美容機器には、だいたい携わってますよ。
佐藤:「ヘアコサージュ」と命名したウィッグも、坂巻が若い頃に病気で髪を一度失った経験から、医療用じゃないものが欲しくて作った商品なんです。誰もが手に取りやすいように値段も手頃に設定したんですけど、真のプロデューサーでしたね。
ひぐち:人を楽しませることも好きで、エンターテイナーでもありました。
佐藤:apishを立ち上げるときも、ご案内ハガキを普通に出してもつまらないと言って、「お客さまが封を開けたときにフワッといい香りをさせたい」と。じゃあポプリを入れようということになって、みんなでポプリの袋に刺繍して作ったんですけど(笑)。お客さまに喜んでもらわなきゃ意味がないという軸は、いつも坂巻の根底にありましたね。
ひぐち:仕事の事前準備もすごかったです。印象的だったのは、23年ぶりの「シザーズリーグ」でMCとして呼ばれた際に、出演者についてちゃんと調べていたのでトークがすごく面白かったんですね。すごいな、さすがだなと思いました。
佐藤:坂巻は「準備がすべてだ」と、いつも言ってましたから。
ひぐち:外部の仕事で必ず爪痕を残す、ということもやってたよね。撮影に行ったら企画書を渡すとか、何かしら次の仕事に繋がるように行動するというのは、坂巻に教えてもらいました。