業界内で話題騒然、25歳の経営者が渋谷に誕生。 倍速美容師、AI TOKYO鎌形諒が描く新世代美容室のあり方とは
美容師としても経営者としても「人としてどうあるべきか」で判断すればブレない
自分もまだ経営者としては初心者なので、プレイヤーとしての在り方と経営者としての在り方で揺れることもあります。そんな時に大切にしているのもやはり、「人としてどうあるべきか」ということ。経営者になると会社の意思決定をするのはすべて自分。その判断基準となるのが、人として胸を張れるかどうかということです。
判断に迷ったときは、それが自分のためなのか、人のためなのかをよく考えること。これはスタッフにもよく言うことで、人のためと思うのならばそれをやろうと。例えばお客さまにトリートメントをすすめるとき。心のどこかで自分の売り上げのためだと思っていると、不思議とその考えはお客さまにも伝わってしまい、「なんだか嫌だな」という気持ちにさせてしまうものなんです。でも、100%そのお客さまのことを思っていてのことだったら、その気持ちは伝わります。その結果がリピートとして返ってくる。これは本当で、僕が前のサロンでたくさんのお客さまに支持をいただいたのも、同じ理由だと考えています。
実は、今の僕の給料はアシスタントと同じくらいの金額です。驚かれるかもしれませんが、利益はなるべくスタッフに還元したい。だって、僕がここで美容師として、経営者として毎日楽しく過ごしていられるのは、彼らあってこそだからです。
そりゃあ僕だって、いい部屋に住みたい、いい車に乗りたいという気持ちはあります。だけど、そんなことよりも周りの人に喜んでもらうのが僕自身一番嬉しいんです。今日も、スタッフに誕生日プレゼントを渡したのですが、「えっ!? こんなハイブランドのもの貰ってもいいんですか?」ってめちゃくちゃ喜んでくれたんですよ。そんな姿を見ると本当に嬉しいし、僕の心が豊かになる。 自分はユ◯クロの服ですけどね(笑)。でも、そうやって利他的にやったことは、お客さまに対してもスタッフに対しても必ず返ってくると信じています。
事業の計画は「楽観的に空想して悲観的に計画して楽観的に行動」
これからの話をすると、年内にもう1店舗出店する計画で、これは当初の事業計画にも入っています。僕は、何かをやりたい時に「楽観的に空想して悲観的に計画して楽観的に行動」するようにしているんです。「あれやりたいな、これもやりたいな」と楽観的に計画して、いざ具体的に動き出したら最悪のことまで想定する。でも、考えはしますが、悲観的すぎると動き出せないので行動は、「ま、なんとかなるか!」と楽観的に。
スタッフの中には自分の店を持ちたいという人もいるので、その出店計画も考えながらフランチャイズ展開も計画の内。AI TOKYO内での具体的なキャリアプランも今のところ6パターンほどあります。それぞれが自由に選択できる、柔軟性や選択権がある制度を考えています。
僕にとって美容室の経営はあくまでやりたいことの一つ。僕自身ももっといろんなことにチャレンジしていきたいですし、何よりスタッフがやりたいことを実現できるような会社に必ずしていきます。
- プロフィール
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AI TOKYO
代表取締役/鎌形諒(かまがた りょう)
千葉県出身。エビスビューティカレッジ卒業。2016年、応募倍率30倍、300名を超える応募があった憧れのトップサロン「OCEAN TOKYO」に就職。当時、最速の2年でスタイリストデビューを果たし、その後1年でトップスタイリストに昇格。歴代初のディレクターまで務め、2020 年に退職。株式会社P.Bを設立し自らがオーナーとなる「AI TOKYO」を立ち上げ、美容室だけでなくアパレルや事業や不動産事業も手掛ける。モットーは『良い美容師である前に良い人間であれ』。
(文/須川奈津江 撮影/菊池麻美)