18年間続けてきた試行錯誤。組織のために、若い世代へバトンタッチしていく ―10年サロン「SORA」のブランディングストーリー後編
2015年〜現在 クリエイティブ飛躍期
もっとサロンを知ってもらうための、新たなチャレンジ
経営が長くなり、規模が大きくなってくると、どうしてもリスクヘッジを考えて保守的になってしまいます。店舗を維持することに力を入れていましたが、経営者としては現状維持じゃ駄目だということもわかっていました。そんな中でオープンしたのが、祐天寺の『SALON & “アンド”』です。
『SALON & “アンド”』は、カフェやギャラリー、本、雑貨など、いろいろなものと美容室を掛け合わせたお店がコンセプト。当時はアパレルショップがカフェとコラボするなど、異分野が組み合わさって新しいものが生まれることが増えていました。美容室でもそれができないかと考えたのがはじまりです。
出店の背景には、学芸大学前店をオープンしてから僕のスタンスが変わっていったことがあります。当時『SORA』をもっと広く知ってもらいたくて、僕自身が作品撮りなどを通じて精力的に活動するようになっていました。そこでのたくさんの出会いを通じて、「もっと視野を広く、より発信力のある組織へと変化していきたい」という想いが生まれました。
このときに、代表3人の役割分担も変わったんです。それまでは金子が財務、山根が外部向けの営業、僕が人事を担当していましたが、山根が財務、金子が人事、僕が外向けのアプローチという風に変化しました。「なんとなくバンドのボーカルを変えてみる(笑)」。そんな感じでした。
外の人たちに向けて発信を続けていると、アーティストやデザイナーなど、クリエイティブな人たちと繋がりができていきました。彼らと話すうちに、もっと新しいことにチャレンジしたい気持ちがどんどん大きくなっていったんです。
継続も挑戦も一筋縄ではいかない。それでもやっていくしかない
『SALON & “アンド”』は、最初は『SORA』の中からスタッフを募集しました。新しくおもしろいことに挑戦する『SALON & “アンド”』と、スタンダードな美容室である『SORA』は雰囲気がまったく違い、僕自身も服装やキャラクターを使い分けています。当時『SORA』から『SALON & “アンド”』に移動したスタッフには、難しい立ち位置で、大変な思いをさせてしまい、申し訳なかったです。
僕としてはどんどんクリエイティブなことに挑戦して、新しい風を吹かせることがすべてのスタッフにもいい刺激になると考えていました。けれど、必ずしも理解され、歓迎してもらえるとは限りません。やっぱり、環境に順応するためには、スタッフにもものすごい努力が必要になります。スタンダードを貫くのも、新しいことを浸透させるのも同じくらい大変。それでも、試行錯誤を繰り返しながらやっていくしかないんだなと感じました。