嫌がられる出店でイメージを高める。ブランドを第一に考えてきた美容室の未来―10年サロン「KATE」のブランディングストーリー後編
2017年〜現在 ローカル共闘期
地域を尊重する気持ちが、熊本への出店を成功させた
2017年12月には、『KATE』の新店舗を熊本にオープンしました。僕、熊本の美容学校に通っていたんですよ。その同級生が熊本店のディレクターである荒尾丹奈(あらおにいな)です。当時は熊本の震災もあって、自分たちも何か貢献できないかと思っていたのですが、彼女の協力もあり、店を出すことにしました。
九州の都会と言うと、「リトル東京」と呼ばれる福岡が有名ですが、熊本にもおしゃれな人がたくさんいるんです。ファッションでも、福岡では手に入らないようなコアなものが熊本では手に入ったりして。感度が高い人が多いです。
場所は、いわゆる美容室通りとは離れた場所にある、川沿いにあるお店です。その店舗にはこれまで「出店したい」という美容室からのオファーがたくさんあったのですが、テナントのオーナーがこだわりの強い方で、全部断っていたそうです。でも、たまたまご縁があって、出店することができました。
最高にロケーションがいいところに出店できた理由は、技術的な裏付けがあったことに加え、熊本に貢献しようとする姿勢を認めてもらえたのだと思います。作品撮りも、現地でモデルを探して、現地のスタッフに作らせることにこだわりましたから。熊本の方は地元愛に溢れているなと感じるので、その気持ちを尊重したもの作りをすることで受け入れてもらえたんじゃないかと考えています。
狙うは表参道との相乗効果。熊本は洗練かつ地域密着型のサロンが作れる
現在は僕や豊田などが数ヵ月に一度熊本へ行き、技術の確認や指導などをしています。売上はとても好調で、席数が足りないくらいです。店舗が増えたことで考えなければならないことや、経理などの実務作業は増えましたが、率直にうれしいですね。
また、表参道のスタッフが毎月熊本に行き、店舗に立つようにもしています。行くたびに毎回予約でいっぱいになっていますね。
スタッフを行かせるのは、サロンイメージを統一するためや両店舗のスタッフが刺激を受けあいながら、クオリティを共有するためです。さらに、相乗効果が起きるといいなと考えています。現在はスタッフの人数的に難しいのですが、いずれは熊本のスタッフに東京へきてもらうような取り組みもしたいです。
熊本店はオープンからもうすぐ2年。スタッフの教育や、技術面でのジャッジを誰がどのようにするのか、表参道店とどう差別化していくのかが今の課題です。熊本は洗練された空間だけど、アットホームで地域密着。そんなお店が作れるんじゃないかと、考えている最中です。
感度の高いお客さまに支持される美容師になる
『KATE』はいつも感度の高い人に影響を与えられるサロンでありたいと思っています。そうしたお客さまがくるお店からは、悪いものは生まれてこないと思うんです。
言い方が難しいのですが、スタッフには「客層ってすごく大事だよ」と伝えています。決してお客さまを選ぶということではありません。目の前のお客さまはみんな大事なのですが、センスがよかったり、発信力があったりするお客さまを持つと自分自身も成長していきます。汗をかきながら、緊張感を持って仕事をする。一日に1人か2人でもそういうお客さまと接する時間があることが重要です。そしてそうしたお客さまに支持されるためには、自分自身を磨き続けないといけません。
店での教育にも変わらず力を入れています。それは豊田、金野、荒尾と常に話していて、ベーシックとトレンドのどちらにもきちんと対応できる教育を実践しています。
最近はこれまで営業時間外に行っていたレッスンを営業時間内に行うことにしました。木曜日は営業時間が2時間短くなります。今までレッスンは金曜日の営業後、つまり21時から行っていたのですが、それだと教える側と教わる側の両方が疲れて頭が回っていないことがあるし、緊張感が薄れてしまうんですね。
レッスンをより実りあるものにするために、一度営業時間内にレッスンというのをやってみようと思いました。フレキシブルな働き方もいいけれど、仕事は仕事の時間として集中して、効率よくやるのがいいんじゃないかと思うんですよね。もちろん、営業時間が短くなるリスクはありますが、うまくいかなければまた別の方法を考えればいいと思っています。お客さまや売上も大事だけど、スタッフの働き方も大切ですから。