たった10年じゃ、まだまだ成長段階。あえて多店舗展開しなかったサロンの次なる施策とは -10年サロン「Door」のブランディングストーリー後編
未来 サロン熟成期
プレイングマネージャーはおすすめできない?
オープン以来、ずっとプレイングマネージャーとして走り続けてきました。プレイヤーと経営者の両立は、正直おすすめしません(笑)。頭を切り換えるのも、時間を捻出するのも大変なので、どちらかに専念したほうがいいと思います。
ただ、両立するからこそのメリットもあります。その最たるものは、やはり現場の空気を常に感じられること。経営に専念してしまうと、現場のスタッフがどんなことを考えて動いているかがわからなくなります。それは数字を扱うときにも影響するでしょう。両方やるからこそ、数字と現実をより近づけて考えられると思います。
僕がフロアにいることで、場に緊張感が生まれるというのもありますね。ただ、いつまでもそれではよくない。最近はレッスンを見ないようにするなど自分の出番を減らし、ベテランのスタイリストに引き継ぐこともはじめています。
上手い美容師じゃなくて、「旨い」美容師を目指せ
サロンには「導入」「成長」「熟成」「衰退」という4つの段階があると思います。『Door』はまだ成長段階。たったの10年ちょっとでは、サロンは熟成しないですよ。
次なる熟成の段階に向かうために、スタッフそれぞれが美容に向き合える環境を作っていきたいです。先ほど話した「56Basics」もその一環です。それから、「知・技・対・魅」というキーワードも掲げていますね。これは知識、技術、対人関係、魅力のこと。これらが身につくとただの「上手い美容師」よりもさらに深みのある「旨い美容師」として、ゲストをもっと喜ばせることができます。『Door』のスタッフには、そんな「旨い人」を目指してほしいんです。
美容師は限られた時間でゲストを満足させ、感動させることを、毎日繰り返す仕事です。楽な仕事ではありませんが、それゆえに毎日がドラマチック。楽しいことも苦しいこともあるけど、全部ひっくるめておもしろいと思っています。改善の余地や反省材料はそれぞれあるでしょう。でも、トータルとしては面白い。僕自身やスタッフがそう感じて働けるよう、これからも経営を続けていきたいです。
- プロフィール
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Door
代表/吉澤剛(よしざわ つよし)
美容、理容のWライセンスを取得。1990年、都内サロンにて美容師としてのキャリアをスタート。28歳でRITZ入社。在職中に著書『フレーミングカット』『RITZ PERM MANUAL』を出版。2009年、エノキモトジュン氏と共同で代官山にDoorをオープン。オリジナルのハサミ「グリップシーザース」開発や、日本で初めての「無重力パーマ」導入など、新しい商材や技術の導入も積極的に行う。セミナー講師として全国各地を回るなど、サロン外でも精力的に活動中。
(取材・文/小沼理 撮影/河合信幸)