人を大切にするためのハングリー精神。拡大を目指さない組織の野心 ―10年サロン「Belle」のブランディングストーリー前編
2012年〜2014年 スタイリスト育成期
スタイリストが育つまで。苦労の多かった助走期間
オープンから数年間は、人を育てることに力を入れた期間でした。『Belle』では中途のスタイリストを採用していないので、アシスタントがスタイリストに育っていくまではやはり苦労がありました。
特にこの時期はとにかく忙しくて、お客さまも途切れずにやってくるし、撮影も多くて休憩もほとんど取れませんでした。ハードな働き方をさせたくないと思っていたのに、僕らがアシスタントをやっていた時代のような忙しさになってしまったんです。この時期には、お店を辞めてしまう子もいました。創業時に掲げた「人を大切にする」ことについて、改めて考えさせられた時期でした。
この経験を経て、休みを増やしたり、給料を上げたりすることでスタッフの労働環境を改善するように努めました。忙しい中でも、コミュニケーションをしっかりとることも意識しました。
この時期は、僕自身も忙しすぎてよく覚えていないほど。そのぐらい忙しい日々についてきてくれたスタッフがいて今の『Belle』があると思うので、当時ともに頑張ってくれたスタッフにはすごく感謝しています。
組織の拡大を優先しない。中身を濃くしていくためのハングリー精神を。
2013年には、原宿に2店舗目をオープンしています。表参道店が常に満席状態だったので、同じエリアにもう1店舗出店しました。表参道と同じ広さで、セット面も同様に10面です。
『Belle』は店舗展開が重要だとは考えていません。人を育てて、通ってくれるお客さまが増えて、席がなくなったら店舗を増やそう、という感覚です。それは最初のころから変わっていません。
ただ、それは現状に満足するということではなくて、「いいサロンにしたい」とはいつも思っています。目指しているのは、スタッフにとってもお客さまにとっても居心地がよくて、他の美容師さんから見ても影響力があるようなデザインを提案できるサロン。店を大きくするというより、中身を濃くしていきたいんです。そのためのハングリー精神は、常に持ち続けています。
- プロフィール
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Belle
代表/飯田尚士(いいだたかし)
1978年生まれ。2010年に堀之内大介氏とともにBelleを立ち上げる。2013年には、2店舗目の原宿店をオープン。2015年7月には、銀座並木通り店をオープンし、さらに同年「♦at’LAV♦」と合併し、「♦at’LAV♦by Belle」をスタート。2017年6月には吉祥寺店、2018年にはBelle Ginza 銀座5丁目店を展開。外国人のような柔らかい質感のスタイルが得意で、モデル・タレントの顧客も多数。
(取材・文/小沼理 撮影/河合信幸)