人を大切にするためのハングリー精神。拡大を目指さない組織の野心 ―10年サロン「Belle」のブランディングストーリー前編

2010年〜2011年 共同創設期

当時は珍しかった共同経営でのスタート。「彼とならできる」と確信していた

 

 

2010年8月、スタイリストの堀之内大介(ほりのうち だいすけ)と一緒に『Belle』を立ち上げました。堀之内はもともと同じ店で10年以上一緒に働いていた、いわば同志。当時は今ほど共同経営という方法が浸透しておらず、不安もありましたが、「彼とならできるだろう」という確信がありました。

 

その理由は、堀之内とはサロンに対するビジョンが一致していたから。まず、二人ともお金にあまり執着がありませんでした。共同経営は金銭的なトラブルで決裂してしまうケースが多いと聞くので、この点は重要です。次に、店舗をどんどん展開していくよりも、ゆっくり確実にサロンを育てていきたいという考えも同じでした。

 

根底にあったのは「人を大切にする」という想いです。二人ともお金や、店を有名にすることよりも、お客さまや働いているスタッフを第一に考えたいと思っていました。

 

『Belle』オープン時のスタッフは7名で、僕ら二人以外はみんなアシスタントでした。今もスタイリストの中途採用はせず、アシスタントから育てるようにしています。求人は自分たちのそれまでの人脈から、声をかけて集めていきました。ネットで求人しようにもオープンしたばかりで知名度もなかったですし、泥くさく、縁を大切にして声をかけましたね。

 

ものづくりの感覚も大切に。目指すのはコンサバとクリエイティブの中間

 

 

『Belle』では、コンサバとクリエイティブの中間のヘアスタイルを提案しています。クリエイティブすぎて真似できないものではなくて、どんなお客さまでもちょっと頑張れば手が届くスタイルです。

 

もともと、僕と堀之内が働いていたのはコンサバなお客さま向けのサロンでした。『Belle』をどんなサロンにするか二人で考えていく中で、デザインを売りにしているサロンへの憧れや、クリエイティブなカットに挑戦したい気持ちがあったんです。しかし、コンサバなお客さまを切り続けてきたことは自分たちの強みでもあります。

 

悩んだ結果、出した答えが「コンサバとクリエイティブの中間」。お客さまにも支持されて、美容師としてのものづくりの感覚も大切にできるカットを提案したいと思ったのです。

 

ハードな働き方をさせないために、若い世代との意識のすり合わせに尽力

 

7名のスタッフでスタートしたオープン当初の表参道『Belle』。

 

2010年8月に『Belle』を表参道にオープンしました。広さは30坪ほど、セット面10席のサロンです。僕も堀之内がそれまでずっと働いていたサロンも、表参道にありましたし、お互いの顧客がきてくれたおかげで最初の集客には困りませんでした。

 

この時期に力を入れたのは、アシスタントとの意識のすり合わせです。僕らの世代では朝から晩までサロンで働いて、休みの日もモデルハントして……といった働き方が主流でした。でも、自分たちの世代と若い世代の子たちは感覚が違っていて当たり前ですし、当時は徐々に美容師の働き方が変わっていく時期でもありました。だから、自分たちのようなハードな働き方をさせたくないという想いがありましたね。

 

当時は7人しかいなかったので、毎週全員で集まって、よく食事会も兼ねたミーティングを行っていました。アシスタントの意見を聞き、僕たちの考え方も伝えながら、働きやすい環境を作るようにしていましたね。そうして全員で頑張りながら半年ほど経ったころ、東日本大震災が起こります。このまま『Belle』も終わってしまうんじゃないかと不安で仕方なかったです。震災直後は1週間ほどまったくお客さまがこなかったのですが、日が経つにつれてお客さまは自然に戻ってきてくれました。

 

震災後は、社員全員で東北へボランティアに行きました。実際に現状を見ておかなくちゃと思いましたし、こういう大きな災害があったと知ることは大事だと思ったんです。もともと計画していた社員旅行を取り止めて、みんなでがれき撤去のボランティアを行いました。美容師として被災した方の髪を切るという考えもあったのですが、僕らがそれをやってしまうと、現地の美容師さんの仕事をなくすことにもつながります。なので美容師ではなく、たくさんの人手が必要ながれき撤去のボランティアとして被災地へ行きました。この経験は、若いスタッフにも大きな影響があったみたいです。僕含めみんな、自分たちがどんなに恵まれた環境で日々働いているのかを再認識しましたし、それが仕事への意識を高めてくれたと思っています。

 

>スタッフを育てながら、ハングリー精神を持ち続けた

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