地震、台風、火災…何を備えればいい? 防災に取り組む4サロンに聞く「美容室の防災いろは」
日頃のサロンワークのコミュニケーションの強さが、非常時への対応にもつながる ――Violet 倉田千秋さん
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防災に力を入れ始めた時期:2016年
想定している災害:火災、地震、台風など
対策をはじめたきっかけ:
名古屋栄店オープン、ビルの防火防災管理者の講習など
行っている取り組み:
緊急連絡先や家族情報の把握、サロンのロッカーに置きスニーカー、養生テープと段ボールのストックなど
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きっかけ:創業から少し落ち着いた頃に迎えた栄店オープン、改めてサロンのあり方を考えた
2016年の栄店オープンにあたって、テナントビルの防火防災管理責任者の講習を受けたのが、防災を特に意識するようになったきっかけです。ちょうどその頃は表参道店の出店から少し落ち着いてきたので、広く物事を見られるようになったというのもあります。
ただし、防災のためだけの取り組みというよりは、サロンの環境をよりよくして行くための体制をしっかり立てたという面が大きいです。地震や火災に限らず、事故などがあってもスタッフ同士連携して落ち着いて対応できる体制を整えています。
現在行っている防災の取り組み
■ 緊急連絡先と家庭事情の把握
上京して一人暮らしをしているスタッフが多いので、何かあったときはご家族にスムーズに連絡を取れるよう、入社時に提出する連絡先資料にご家族の情報を書き込む欄を追加しました。具体的にはご実家や緊急連絡先、ご家族が住んでいらっしゃる場所や連絡手段などの情報です。資料は個人情報として本部で管理しています。
■ ロッカーに置きスニーカー
東日本大震災のときにサロンから6時間ヒール靴で歩いて帰った経験のあるスタッフがいたことから、公共交通機関が止まった場合も帰れるように全スタッフがロッカーにスニーカーを置いておくようにしています。幸いまだロッカーのスニーカーが活躍したことはありませんが、反対に台風の予報の日に家からスニーカーでくるスタッフもいました。
■ 養生テープと段ボールをストック
サロンの売りでもある大きな窓を台風前に補強したり、万一割れてしまった場合に塞いだりできるよう、窓に貼れるだけの段ボールと養生テープを常にストックしています。
■ 環境整備担当が月一回で点検
掃除係を設けており、そのリーダーが環境整備担当として備品など全体を把握しています。また、代表の前原と月に一回サロン全体を回っての確認もしています。これまでに、3階と4階をつなぐ階段が滑り落ちやすいので縁に滑り止めをつけるなどの改善をしています。防災のみの観点ではありませんが、防災においても重要な視点だと思っています。
スタッフの変化:現場から防災の取り組み案が上がってくるように
普段から現場のコミュニケーションを吸い上げられるように、Violetでは「アシスタントミーティング→スタイリストミーティング→幹部ミーティング」とミーティングを3段階置いています。各セクションで論点をまとめて次のセクションへ送ります。その際、「どうしたらいいですか?」ではなく、「こうしたい!」というところまで声をまとめてあげてもらっています。
段ボールと養生テープのストックは、アシスタントから声が上がってきた取り組みです。実は2019年の台風で、サロンの売りでもある大窓が割れてしまいました。養生テープが足りず、手元にあるだけのガムテープなどを使って可能な限り補強したのですが、翌朝サロンへ行ってみると割れてしまっていて…。スタッフみんな、かなりショックを受けていました。その経験から何ができるかをみんなで考えました。
また、震災などに限らず感染症対策なども含め、できるだけ経験者の生の声としてサロンワークの中で得られるお客さまの声を重要視しています。ただし、情報を鵜呑みにするのではなく、人に伝えたり実際に動いたりするのは自分で調べて確証が持ててから。現場から聞いた話を本部で精査し、具体的な施策対応にして現場へおろしています。
美容室として、災害時でもスタッフにはお客さまの安全第一で行動してほしい。そのためにも、サロンとしてはスタッフの安全を守って安心できる環境を整えるのが大切だと思っています。今回の取材をきっかけに、非常袋や避難訓練など、より整えられる点を増やしていきたいと思っています。
プロフィール
Violet
総務/倉田千秋(くらた ちあき)
神奈川県横浜市出身。2016年violet入社。総務として主に広報を担当し、サロンの情報やスタッフ一人ひとりの魅力を発信している。また、社内では環境整備にも注力し、スタッフがより安心して活躍できる環境を整えるよう日々取り組んでいる。
<まとめ>
各サロン、立地や人数などによって防災の取り組み内容は少しずつ異なるようです。一方で共通しているのが「日頃の備えがあるから、もしものときにお客さまとスタッフの安全を守れる」ということ。毎年のように長雨や台風など自然災害が聞かれる昨今。ぜひこれを機会に、一度防災について考えてみてくださいね。
(取材・文/QJナビDAILY編集部)