地震、台風、火災…何を備えればいい? 防災に取り組む4サロンに聞く「美容室の防災いろは」
現在行っている防災の取り組み
■ マニュアルをバックルームに掲示
お客さま第一の基本姿勢、避難経路、状況把握とすぐ避難するか施術を続けるかの判断ポイント、ご予約のお客さまへの連絡についてなど、いざというときにパッと確認できるように必要な情報をコンパクトにまとめています。事前の確認も重要なので、台風や大雪など天候の荒れが予想できるときは朝礼や終礼であらかじめ共有し、万一の場合はマニュアルを確認して動くように伝えています。
内容のベースは2店舗同じですが、一部はそれぞれの立地で変えています。例えば交通状況だと、「海と砂原美容室」は車のお客さまが多いので、まず車にガソリンが入っているか、道路は土砂崩れの心配がないか。「UMiTOS」では電車の運行状況と、車利用の方がいる場合は高速道路の通行止め情報など、確認ポイントは少しずつ異なります。
■ 防災袋の用意
防災用品一式を3袋に分け、フロントとシャンプー台の裏に設置しています。どちらも、お客さまから見えにくく、避難時の出入り口に近い場所です。防災用品の内容は、行政機関が出している防災マニュアルなどで推奨されている一般的なもの。中でも防寒シートなどはお客さまの分も考え多めに入れています。食品は補充した際に賞味期限を袋に記載し管理。そのほかのものも年1〜2回で確認し、都度必要なものを足したり、サロンに置いてあるもので代用できそうなものは抜いたりと更新しています。
■ 保存水100リットルの備蓄
薬剤を落とすに必要な水量は1人あたり約2リットル。現在はコロナ対策で席数を減らしたこともあり、満席で全員が薬剤をつけていたとしても14リットルで足りる計算です。それよりも使用量が多いのがトイレです。台風で「海と砂浜美容室」が1週間断水した際は、備蓄の保存水では足りず、近くの川の水を汲んできたり、自衛隊の給水で足したりしました。このとき、断水は停電後すぐではなく少し時間が経ってから止まることがわかったので、現在は停電したときはまずシャンプーボールいっぱいに水を溜めるようにしています。
■ 限られた水でのシャンプー方法を習得
砂原が介護美容師の資格を持っており、介護現場で使う方法をベースに流し方を工夫したシャンプー法です。営業中に停電や断水したときを想定し、スタッフは全員入社時に一度やって見せて覚えるようにしています。ただし台風による断水の際は、介護現場の方法そのままではカラー剤などをすべて流すのは難しい印象だったので、今後またアレンジしてアップデートしていく予定です。
■ 発電機の用意(「海と砂原美容室」のみ)
2019年の台風で停電になったとき、たまたまヘアカットに来ていた農機具屋さんが発電機を貸してくれたのをきっかけに、発電機を用意しました。冷蔵庫とドライヤーが利用できる出力のものです。重さは25kg、なんとか女性スタッフでも1人で運べるサイズにしました。
スタッフの変化:2019年の台風での停電・断水も、慌てず対応できるように
2019年の台風被災時は、スタッフが慌てることなくお客さま第一で動いていました。もし普段の準備やマニュアルがなければ、パニックになってお客さまのケアをできなかったと思います。やはり、日頃から防災の意識を持っていてよかったと感じました。
断水のあった1週間も営業は続け、ドライカットのみで対応しました。電話や携帯の電波が通じなかったので、スタッフ一人が車で電波が通じるところへ移動し、予約されていたお客さま全員にお店の状況を説明、来店の有無の確認や日程変更の相談などをしました。
最初はキャンセルされる方が多いかなと思っていたのですが、8割のお客さまが予定通り来店されました。ご自宅も停電・断水状態で、暑いし洗えないのでさっぱり切りたいという方が多かったんですね。
また、「生活が大変な中、髪までボサボサで伸ばしっぱなしだと被災しているという感覚が強くなってしまう。気持ちまで被災したくない。せめて髪を整えて気分を上げたい」という声も強かったです。そういった声に応えられるのも、平常時から防災に取り組んで落ち着いて行動できてこそですよね。
プロフィール
UMiTOS クリエイティブディレクター
シラトリユウキ
埼玉県出身。都内有名店2店舗を経て、UMiTOS のオープニングから参加。サロンワークはもちろんのこと、ヘアメイクとして雑誌やテレビなどさまざまなメディアで活躍。現在はクリエイティブディレクターとして、持ち前の表現力をサロンの内外で発揮しつつ、教育・採用・人事担当として手腕を振るっている。
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