子ども向けのイベントがスタッフ教育にもなる。「子どもとビヨウ」が秘める無限の可能性とは? ―potamu櫻井亮さん

「子どもとビヨウ」は優れた教育ツール。イベントをはじめて気づいたこと

 

 

このイベントをはじめてみて気づいたのは教える側の美容師にとっても大きな学びがあることと、ルーティーンになりがちな業務の刺激になるということ。

 

まずスタイリストだけでなく、アシスタントにも司会などの役割を与えることで、普段とは違う一面が見えるんです。早期に教える立場を与えられることで、本人も教えることがいかに学びにつながるか体感することができています。例えば、美容の用語は子どもにはわからないことが多いし、「デザイン」という概念も子どもたちはわかりません。それをどうしたら伝えることができるのか、言葉を分解したり、絵を使ったりして、まずは理解してもらうことだけでも新たな発見があります。さらにハサミやカラー剤を使うので安全にも気を配らなければならないし、子どもたちはつまらなかったら「つまんな〜い!」と正直に言うので、飽きさせないための工夫も欠かせません。

 

 

頭も身体もフル回転で挑むのでイベント終了後はクタクタになりますが、参加したスタッフ全員が、まるで憑き物が落ちたように晴れやかな表情になります。子どもに苦手意識がある美容師も、予想を裏切る楽しさと気付きがあったと言っていましたし、あるとき参加した美容師は「このイベントは浄化作用がある」と話していました。このイベントは、サロン内に知らずに溜まっている淀みや、よくない雰囲気などもリセットし、店の活力源にもなっているんです。

 

地域社会活性化だけじゃない。今後は美容学生たちにも参加してもらいたい

 

 

僕がこのイベントで実感している最大のメリットは「教育」です。もちろん顧客満足や集客にもつなげたいと考えていますが、やり続けるのはスタッフへの教育効果があるため。さらに、他のサロンが出そうと思ってもなかなか出せない「アットホームな雰囲気」というものも生み出せている気がします。そういう意味では、サロンのブランディングにも一役買っているのではないでしょうか。

 

現状の課題は参加希望者に対して美容師が足りていないこと。仲間はいつでも募集中です。今後は、この優れた教育ツールの面を美容学生にも広げられたらなと思っています。

 

最初は子どものたちに美容師という職業のよさを伝えたいなと思っていたのですが、今は別に美容師に限らなくてもいいんじゃないかと思っています。もっと広い意味で「働くことは楽しいんだ」と子どもたちに感じてもらえたら、それだけで社会貢献になるはず。それでも参加した子どもが将来、美容師になってくれたらうれしくて泣くと思いますけどね(笑)。

 

 

プロフィール
potamu
オーナースタイリスト/櫻井亮(さくらいまこと)

1978年生まれ。千葉県出身。東京総合理容美容専門学校卒業後、都内2店舗を経て渋谷でフリーランスを経験。2014年「potamu」オープン。美容を通して地域社会活性化を目指す。好きなカバは上野動物園のジローくん。

 

 

(取材・文/若月美沙 撮影/河合信幸)

 

 

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