世界で通用するのはやっぱり「基本」。ハワイで見つけた美容師の本質―「OCEAN HAIR」オーナー・hiroさん
長く続けるコツは、ニーズに応えつつ自分らしく働くこと
オープン告知は日本人向けのフリーペーパーや日本語新聞「日刊サン」に広告を出しました。アラモアナショッピングセンターのすぐ前という立地を選んだのも日本人のお客さまを狙ってのこと。その効果もあり、日本人女性のお客さまが多く集まってくださっています。
日本人のお客さまは、現地の美容室に行って失敗された経験を持っているんです。例えば「長さを変えずに軽くしてください」と言われたとき、僕ならそれがセニングで軽くするとわかりますが、外国人の美容師さんだとレイヤーを入れてしまうこともあるんですよね。同じ日本人だとそういう感覚が通じやすいので、安心なようです。
またありがたいことに、日本でもかなり人気のモデルさんが来店してくれたり、ファッションショーのヘアメイクをする機会に恵まれたりしたのも、サロンが軌道に乗った理由かも知れません。とはいえ継続するにはやはり、日々のサロンワークが大事。
日本でも同じかもしれませんが、提案する力の重要性をより強く感じています。日本と同じようにカットしても、気候の影響でまとまりにくくなったり、ハワイは硬水だからシャンプーの泡立ち方が日本とは違い、髪がきしみやすかったり。それに日差しが強いので、カラーの褪色も早いんです。さらに、ハワイに長く住んでいる日本人のお客さまは、みんな「自分は何が似合うのか」という意見を強く持っています。それを察知して、さらに髪質とハワイの水質、気候にあう髪型を提案しなければなりません。
他にもある日本人が経営する美容室の中から選んでもらうためには、技術はもちろん、ハワイの水質や気候に合わせた髪型の提案など、基本的な“美容師力”が問われるのだと思います。
技術に対してシビアな反面、働く時間は南青山にいるときに比べてとても楽になりました。今、息子が4才なので、休日はなるべく一緒に過ごしたい。そこで日曜を定休日にしたのですが、お客さまもすんなり受け入れてくれるんですよね。営業時間も9時から19時まで。家族とリラックスして過ごす時間は、日本にいたままだったら持てなかったかも知れません。
今もし「海外で活動してみたい」という美容師さんがいるとしたら、とにかく一歩踏み出してみてほしい。日本で積み上げてきたものを全部捨てるのは怖いけれど、それって逆に考えれば、海外で失敗しても戻る場所があるとも言えますよね。
ハワイにきて10年。この地で失いかけた美容の楽しさを再発見し、自分らしく働くライフスタイルを手に入れました。今は子育てもあり先のことは決めていませんが、また新しいステージが見えたら、迷うことなく進んでいくと思います。
- プロフィール
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OCEAN HAIR(オーシャンヘア)
hiro(ヒロ)
1977年生まれ・千葉県出身。山野美容専門学校卒業後、南青山の老舗サロンに9年間勤務。ハワイへ渡り4年間サロン勤務後、2012年「OCEAN HAIR」をオープン。リラックスできる空間と丁寧な施術でハワイ在住のモデルなども訪れる人気サロンに。
(取材・文/橘川麻実 撮影/内田恒)