世界で通用するのはやっぱり「基本」。ハワイで見つけた美容師の本質―「OCEAN HAIR」オーナー・hiroさん
日本人も多く訪れる、ハワイのアラモアナショッピングセンターの近くにオープンした美容室「OCEAN HAIR」は、日本人が経営するサロン。オーナーのhiroさんは南青山の有名サロンでスタイリストをしていたという華やかな経歴の持ち主です。なぜ、有名店というブランドを捨て、ツテも何もないハワイへ渡ったのか。そのストーリーに迫ります。
ここにいる意味を見失った30歳目前。とにかく海外へ行きたかった
僕が美容師になったのは1998年、カリスマ美容師ブームがはじまる1年ほど前でした。入ってすぐ、勤めていたサロンのスタイリストがテレビ番組に出演しはじめたこともあり、ブームを肌で感じながらアシスタント時代を過ごしました。スタイリストになったのはその4年後です。カリスマブームも徐々に落ち着いてきてしまっていて、若干乗り遅れ気味ではありましたが、それでも美容師として刺激的な日々を過ごしていました。
しかし28歳のころ、ふと不安になったんです。周りに比べて売れていない自分のことや将来のことを考えはじめると、ここにいるべき意味を見失ってしまって…。それに、あまのじゃくな性格もあってか、何か人と違う道を進みたいと思ったんです。それで海外で働こうかなと思いはじめ、サロンを辞めてしまいました。
なぜハワイだったのか? 恥ずかしながら特に明確な理由はないんです。リゾートで暖かそうだし、南青山に比べてのんびりしているかなと。あと、ハワイにはカナダやオーストラリアのように、ワーキングホリデー制度があると勘違いしていたんです。そんな基本的なことも知らずに先にサロンを辞めてしまうなんて、今思うと向こう見ず過ぎますよね。
ハワイデビュー直後にぶち当たった大きな壁。積み上げてきたものを壊すことで得られたもの
ハワイで最初に働いたのはホノルルのホテル内にある総合サロン。オーナーが日本人で、「南青山からカリスマ美容師がきた」と紹介してくれたこともあって、滑り出しは上々でした。日本で勤めていたサロンに通われていたお客さまもきてくださいました。
しかし、どんどんお客さまが離れていってしまったんです。なぜ自分にはお客さまがつかないんだろう…と考えていくうちに、南青山とホノルルではお客さまのスタンスが違うことに気づきました。
南青山にきていたお客さまは「ブランドサロンで流行りの髪型にしたい」という目的でいらっしゃる方がほとんど。1日中、同じような髪型を切っていたこともありました。それに対してホノルルのお客さまは「自分らしいヘアスタイルにしたい」という考えなんです。よく考えれば髪質も顔立ちもライフスタイルも違うのに、みんな同じ髪型であるわけがないんですよね。それなのに自分は南青山ブランドを盾に、押し付けの提案をしていた。それじゃお客さまがつかなくて当然です。
そこで、“お客さまの要望にプロとして応え、一緒に髪型を作っていく”というスタンスを大切にするようにしました。すると、お客さまよりもまず自分が楽しくなってきたんです。それに呼応してお客さまも徐々に増えていきました。このときが美容師として自分が大きく変わった転換点だったと思っています。