お客さんの「カルト化」がブランド価値につながる。床屋を新たな“溜まり場”に進化させるMERICAN BARBERSHOP FUKの試み

福岡にオープンした理由は、街にあった雰囲気のよさ

 

 

2号店となる『MERICAN BARBERSHOP FUK』を福岡にオープンしたのは2018年4月です。福岡に出店したのは、街にすごく“いい感じ”があったから。

 

もともと2号店は東京に出そうと考えていたんですが、全然物件が決まらなかったんですよ。それで東京を嫌いになって(笑)、傷心していたとき、友だちから「福岡でアートスタジオを立ち上げた」と連絡がありました。遊びに行ってみたら、雰囲気がすごくよかった。福岡って、原宿に日本中から人が集まるみたいに、九州中から人が集まってくるんですよ。だから活気があって多様性に富んでいるし、アジア圏とも近いから韓国などのカルチャーがいち早く入ってきたりして、すごく独特なんです。

 

ユースカルチャーが活発なのも特徴ですね。イラストやグラフィティをやっていたり、自分でブランドを立ち上げようとしていたり、クリエイターを志す若者が元気です。この街の空気感と、メリケンのエッジの効いた世界観は絶対に相性がいいはずだと思い、出店を決めました。

 

立地は悪くても、世界観にマッチした物件を選んだ

 

 

『MERICAN BARBERSHOP FUK』はちょっと変わった立地にあるバーバーです。若者たちでにぎわう天神や大名から離れた警固というエリアで、しかも地下にあるから入り口も分かりづらくなっています。

 

なんでこんな場所にサロンをオープンしたかというと、とにかく物件に惚れ込んだんですよ。ここはもともと20年近く古いジャズライブハウスとして営業していたところで、奥田民生が飲みにきていたり、『ゴルゴ13』にも描かれたりしたような場所。そんな伝説的な店を、バーバーという文脈で再定義したいと思いました。

 

 

また、店のコンセプトの一つに「スピーク・イージー」があります。「スピーク・イージー」とは、禁酒法が成立した1920年代のアメリカにあった潜り酒場のこと。酒を売ったり飲んだりすることが禁じられていたから、「一見すると床屋や葬儀屋なんだけど、店の奥にある隠し扉をくぐるとバーになっている」という店があったんですよ。

 

「スピーク・イージー」の秘密めいていてラグジュアリーな雰囲気を作るのに、入り口がどこかわからなくて、もともとは伝説的なジャズバーだった場所って、最高じゃないですか? だからこの物件を見つけたときは即決でしたね。

 

バーの利益をバーバーもシェアし、カッコいい仕事が報われる仕組みに

 

 

『MERICAN BARBERSHOP FUK』は、扉を開けて階段を降りるとまずバーバーのスペースがあって、その奥に喫茶店とバーがあります。神戸の店舗でもコーヒーやビールを提供していますが、それをアップデートして、ちゃんとスペースを併設したのが福岡のメリケンですね。

 

ちなみに、バーバースペースと喫茶店・バースペースは扉を隔ててしっかり分かれています。だから行政上の手続きで滞ることはなく、スムーズでした。

 

 

僕には『MERICAN BARBERSHOP FUK』をソーシャルなハブにしたいという思いがあります。バーを作ったのは、お客さん同士がつながる場を作りたかったから。居合わせた人たちがコーヒーやウイスキーソーダを飲みながら意気投合して、友だちになったり、ビジネスに発展したりすれば最高にうれしいです。

 

そうして人が集まる場所になると、メディアが注目してくれてブランディングができるし、バーラウンジでのイベントも盛り上がる。イベントで大勢の人がドリンクをオーダーしてくれたら、その利益をバーバーで働くスタッフとシェアできます。バーバーは相当頑張って売上をあげないと、なかなか稼ぐことが難しい仕事。バーを設置したのには、カッコいい仕事をしている彼らが報われる仕組みを作りたいという思いもありました。

 

ただ、実はバーバーとバーを一緒に経営しているお店は海外にもうあります。それを真似するだけでは嫌だと思って、思いついたのが喫茶店でした。いわば海外の事例をサンプリングし、日本に昔からある喫茶店を「ネオクラシック」として取り入れて『MERICAN BARBERSHOP FUK』ができたんです。

 

 

>街中で聞いた「メリケンってヤバイらしいよ」

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