街の美容室Vol.2 代官山praha大川英伸さん
それぞれの街を代表する美容師さんをインタビューする企画、「街の美容室」。第二回目の街は「代官山」。もともとおしゃれな街として有名でしたが、代官山TSUTAYAのオープン以来、さらなる盛り上がりを見せています。
代官山にオープンして10年というprahaの代表、大川英伸さんに、表からは見えない、ちょっとほっこりする代官山のお話しを伺いました。
−まず大川さんの街の遍歴を教えてください。
実は僕、代官山からスタートした美容師ではないんです。
最初は荻窪、原宿、群馬、また原宿に戻り、その後代官山でprahaを開きました。
−群馬……?
もともと独立願望があったので、東京での独立は無理かもしれないと思って実家のある群馬で頑張ろうと24歳で一度帰りました。
でも刺激が足りないと感じたり、クリエーションをもっとやりたいと思ったんです。そのときたまたま原宿でサロンを開く知人に一緒にやろうと誘ってもらって原宿に戻り、そこで5年間店長をやってから独立しました。
−なぜ代官山という地で出店を決めたんでしょうか?
これから10年、20年通う街になるんだから自分の好きな街にしようと思ったんです。
−いつから代官山がお好きだったんですか?
僕がまだ20歳くらいのとき、代官山アドレスがまだ同潤会アパートだった頃、坂をのぼっていくとオレンジの光が見えてきて、そのオレンジの光はboyさんの照明の光なんです。
その光景がなんともパリっぽい雰囲気をかもしだしていて、ずっと心に残っています。その光景が僕の独立のイメージになったんです。
−prahaは代官山でも裏路地にお店がありますよね。八幡山通りや駅前などを選ばなかったのはなぜでしょうか?
僕が好きだった頃の代官山の面影を残しているのがこの道だけだと思っているんです。それにお店に通じる階段のところがパリのモンマルトルの丘のような雰囲気もあるような気がします。
−大川さんから見て、代官山はどんな街でしょうか?
代官山って敷居が高い印象がありますよね。でもそれって80年代〜90年代の代官山ブームのときに作られた印象なんじゃないかな。
本当は下町っぽい感じですよ。昔っから住んでいる人も多いですしね。
ご近所のおじいちゃん、おばあちゃんから、prahaのテラスでBBQやらせて〜って言われたり(笑)。実はご近所付き合いが深い街なんです。
−代官山のTSUTAYAやログロードができてからはいかがですか?
代官山のTSUTAYAは便利ですよね(笑)。お客さまの流れで言えばこっちの方にはあんまり影響ないかな。
−そうなんですね!
八幡山通りの方は変わったかもしれませんが、お店自体にはあまり影響ないんですよ。ミーハー思考の人はここまであまりこないですね。
−お客さまはどんな人が多いでしょうか?
原宿・青山が苦手な人が多い印象です。一度好きになっていただくと離れない人も多いかもしれません。
それに海外が好きで、ヘアスタイルを含めてナチュラルだけどクセのあるものが好きな人が多いです。
−客層はいかがでしょう。
年代も幅広いですね。それこそ近所のおじいちゃん、おばあちゃんもくるし、それ以外ならデザイナーさんやクリエイターさんが多いかな。
あと紹介がすごく多くて、月に20~25人くらいは紹介でご来店いただいています。
−それはすごい。
特に何かサービスをしているわけじゃないんですけどね。あとは新規の方だと、「(大川さんに)バッサリ切ってもらうって決めてきました!」なんて言ってくださる方も多くて。
そうそう、今はとあるご家族4世代切らせていただいたりも。お店が子どもだらけになる日もあるし、父・母・娘と切る日もある。
……そんな光景を見ていると、僕はこういうお店にしたかったって思うんです。
大好きなこの場所で、ここで働きたい人が集まって、ここで切ってもらいたい人に来店してもらって。好きが集まっていますよね。僕はビジネスが下手だからそういう場所になったことだけでいいんですよ。
−素敵なお話です。
僕はLong life beautyをやりたいんです。一人のお客さまと長くお付き合いをする。究極を言えば死化粧をするまでお付き合いをさせていただきたいんです。
それが叶う場所だと思っています。最終的にはこの通りをpraha通りにしたいな(笑)。この通り以外ではお店をやるつもりはないんです。
代官山の老舗のお店、ママタルトさんのママさんにお店にきて頂いたときに、
「この場所で20年は続けなさい」って言ってくださったんです。
長らくこの地に根付いている方の声は力強く僕にひびきました。お店をオープンしてから10年経ちましたが、これからは代官山といえばprahaと呼ばれるようにしっかりやっていきたいと思っています。
- プロフィール
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praha代表 大川英伸
2007年に代官山にprahaをオープン。クリエイティブな個性派スタイルからナチュラルな日常のスタイルまで幅広い提案で支持を集める。一般誌、業界誌からの信頼も厚く、オファーが絶えない。
(取材・文・撮影/高橋 優璃)