街の美容室vol.19 三軒茶屋
―インテリアや置物にも、味わいがありますね。
時間を経たからこその、経年変化が好きですね。庭の支柱も、鉄骨屋さんから買ってきて設置したものがサビたり、木もちょっと古びたくらいが、かわいいなと思って。物が時の流れとともに自然に変化していくのは、ある意味「成長」だと思うんです。店内や庭に植物を多く配置しているのも、植物が成長していくように、お店自体も成長していけたらいいなという思いも込めています。
時間を経たからこその味は簡単には出せないし、人間が意図してつくれるものではありません。サビっぽい感じ(、、)とか古っぽい感じ(、、)とかはあまり好きではないんです。洋服も古着が好きですね。今、若い子たちが着ているようなダメージっぽい(、、)感じとか、オシャレっぽい(、、)感じがあまり好きではありません。70年代や80年代や90年代の、時代それぞれのオリジナルが好きです。はやりはくり返しまわってくるものだから、今ある量産の服たちのルーツが好きっていうか……。
「フェイク」、いわゆる「〜っぽい」には、時間の流れが感じられない。時間をちゃんと経てできたもののストーリーが好きなのかもしれません。自分の作品を撮影するときも、ストーリーが感じられる写真でありたいなと思っています。
―お仕事の細部にそうしたセンスが現れていると思いますが、センスとは、どのように磨くものなのでしょうか。
髪や服にも、自分の趣味嗜好が現れると思います。美容師なら技術は常に磨いて当然ですが、そこにプラス、センスを育てなければならない。それにはまず、自分自身の好きなものを追求することが大事だと思います。
たとえば自分の好きなファッションの背景には、実は昔の映画があって、それに出ていた女優さんが着ていた服が、今もう一度流行っていると知れば、「そんな映画があったのか」と興味をもって、その映画を見てみたり、さらにその時代のファッションに興味をもって、その時代のファッションショーの映像を探してみたり。その映画に登場している俳優や監督は、その後どういう映画をやったのかとか、今はこういう映画やっているから見てみようとか、一つの興味からどんどんつながって、好きな世界観が深まっていくと思うんです。
髪型でも、なぜそれがいいと思ったのか……たとえば、ある女優さんの髪型に似せたいと思ったのなら、それはどんな雰囲気で、どの媒体に出ているのか、スタイリスト、ヘアメイクは誰なのか……そうしたことを追っていくと、その髪型がどういう背景でつくられているのか知ることができるし、担当しているスタイリストさんを追っていろいろな写真やブログ、雑誌を見て、自分の好きなスタイルを探求していけます。
ぼくはそうやって、マニュアルにはならない方法で、ファッションやカルチャーを勉強してきました。今の若い人たちも、パソコンや携帯で情報を簡単に検索して終わるのではなく、そこからさらに興味を広げて、自分なりに追求していくことが大事だと思います。それを続けていけばおしゃれになれるし、もっとなりたい髪型やスタイルに似合う自分をつくっていくことができます。たとえば寝癖っぽい跳ね具合とか、ちょっと帽子で髪を隠したときのかわいい感じとか、そういう微妙なニュアンスづくりも自然にできるようになってくると思うんです。