誰でも美容師になれる国!? 「ジャカルタ」で感じた海外展開の難しさ― Lond代表取締役小林瑞歩さん

海外でも日本でも、やることは変わらない。クオリティが高いヘアを作れる美容室だからリターンにつながる

 

 

現在、Lond Tokyoにこられているお客さまの8割は日本人の方。日本のLondに通われていた方が仕事の都合でインドネシアにきた際、うちに来店してくださることもあります。

 

お客さまがLond Tokyoを評価してくれている理由。それはやっぱり“技術”だと思うんです。

 

「日本で9店舗美容室を展開している」というLondの看板があるのも売りではあります。「日本でも多店舗展開している美容室」であることを知り、来店してくれている人もいるかもしれません。でもきてくださった以上、どうやってリターンにつなげるかといえば、いいスタイルを作ること。結局ジャカルタという地でも、クオリティが高いヘアを作れる美容室だからリターンにつながっているのだと思います。

 

また、うちの店が選ばれているのは、日本らしい細かい気配りのある接客と、日本人特有のニュアンスに対し、共通認識が持てる点もあります。

 

例えばインドネシアの地元のサロンは、お湯の温度が下がり冷たくなっても気にしないらしいんです。でも、日本ならシャンプーをしていて、お湯に温度変化があったら、お客さまからシャンプーヘッドを外しますよね。うちのスタッフは、温度が安定しないときは、温度が戻るまで待つので、そういった日本らしい細かい気配りに、日本人の方は安心感を感じてもらえるようです。

 

あと、海外では日本人同士ならわかるニュアンスを外国語で伝えるのがすごく難しいんです。日本人の美容師なら「ここをフワッとしたい」、「ここを少し軽くしたい」と聞いたらなんとなくお客さまの伝えたいニュアンスがわかりますよね。でも海外の美容室に行ったとき「軽くしたい」と外国語で伝えても、お互いに共通認識を持つことは難しいんです。お客さまの中には、軽くしたいと伝えたら、刈り上げられてしまったという方もいました。

 

「美容師」の資格がない国で、文化や価値観の違うスタッフを育てるのは難しい

 

 

お客さまから評価を得られ、12月には250名の来店を達成し、手応えを感じている一方で、店を継続させていくために、さらに売上を上げないといけないという課題も感じています。インドネシアは2億7000万人ほどの人口があるので、現地の方をどうやって来店につなげるかということも考えなければいけません。

 

そうなるとスタイリスト僕一人で回していくのは限度があるので、現地のスタッフを育てることが必要です。

 

インドネシアには、美容学校もなければ、美容師免許のような資格がないため、言ってしまえば誰でも美容師になれます。最低賃金も日本と比べてだいぶ低く、仕事を選ぶ基準は、生活をしていくためのお金がどれくらい得られるかが大きい。だからうちのサロンよりも、隣のレストランのほうが給料がよければスタッフは辞めてしまうかもしれません。

 

言い方はよくないのですが、「数年後、これくらい給料をもらえるようになるために、今はこの仕事をしている」という考えではなく、「来月や再来月の給料がいくらもらえるのか。どういうふうに今を生活していくか」という目下のことを重視する国民性なんです。だから、スタッフを育てても、デビュー直前になって辞められてしまうリスクもあり、不安に思うこともあります。

 

でも日本とは違う国なので、価値観が違うのは当たり前。今いるアシスタント2人には「ずっとアシスタントにするつもりはないし、スタイリストになってほしい」という話をしています。勉強会や練習などをして、自分のスキルが上がって、いずれ髪を切れるようになって、お客さまを担当できればお給料が今の3倍、4倍になる。スタイリストになることで、自分たちの生活どう変化するのか、というところから説いて、イメージしてもらうようにしています。

 

僕はジャカルタにきて、生活水準や貧富の差が激しいことを目の当たりにし「うちで働いているスタッフたちだけでも、いい生活ができるようにしたい」という気持ちが強くなりました。僕なんかが「インドネシアに貢献する」なんて、できないかもしれませんが、この国にきて僕は働かせてもらっている立場。だったら、そこで一緒に働いてくれているスタッフに少しでも還元をしたいんです。

 

スタッフを上手く指揮して、運営していくというのはビジネスのやり方としては、ありだと思います。けれど、僕は無理強いや搾取はしたくない。ジャカルタにきても、「スタッフ第一主義」というLondの企業理念は一緒だなと思います。

 

>海外に「Lond」のブランドを広めていきたい。代表としての役割とは?

 

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