特集「あたらしい美容室」-好きで繋がるオトコの“コミュニティ” メンズサロンって?-
“出会い”と“繋がり”を与えてくれる『好きなモノ』
— お店を目の前にした時、カルチャーが全面に出ているお店だなと感じたのですが、どのような経緯でいまのような個性的なお店になったのでしょうか?
「前のサロンにいた時に、男性のお客さまが多かったことが一番関係していますね。その環境の中で『メンズサロンを開いたら面白いんじゃないか』ってずっと考えていて。
それと、今ある美容室は良い意味でも悪い意味でも足を運びづらいと思っていたからです。キラキラし過ぎて入り口で凄い緊張するみたいな(笑)。自分を含めて、20代まではそういうところに行くことがステータスになったのかもしれませんが、歳を重ねるごとに背伸びするのが恥ずかしくなってしまうじゃないですか。そういったストレスをなくしたいということもあって、メンズライクなサロンをオープンするまでに辿り着いたんです。
店舗の雰囲気は、流行廃り関係なしに僕の好きなモノを純粋に集めただけです。スタッフも僕と同じ感覚を持っていて、好きなものに共感できる仲間ばかり。そうしたことで自然と作り上げられていき、最終的にこうなったという感じですね」
— 実は以前から祐天寺に“スケーターの美容室”があるというような噂が耳に入ってきたことがあったのですが、スケートカルチャーという点は意識していたのですか?
「そこに対しては、スケートボードのカルチャーをメインにお店を作ろうとか、そういった考えを持っていたわけではないんですよ。自分がスケートをやることもあり、皆さん強く印象に残っているようで、よく言われるんですけれど。本当に自分の好きなモノを寄せ集めていった結果、たまたまそう見えるようになったのかもしれませんね」
— そうなんですね。この環境だからこそ生まれたこと、できたことなどはありますか?
「好きなモノで繋がれることですね。もともとギャラリーを回ることが趣味ということもあって、お店の一部にアートスペースを設けたんです。そこに知り合いのアーティストの絵を飾ったりとか。店名にある『Stand』というのがモノを売るスペースという意味なんですが、物販スペースに仲の良い洋服屋さんの商品や小物を取り扱ったり。
こういった内容も自分が好きという単純な理由からですが、横のつながりが広がり、最近流行っているSNSなどに頼らなくても人と出会い、繋がります。スケートボードなんかはわかりやすく、世界のどこへ行ってもスケボーを持っていれば誰とでも友達になれるじゃないですか。皆さんが思っている以上に、こういったローカルな結束力って強いんです」
人を繋げる『好きなもの』
アバウトの中にある大切なこと
— オープンしてから5年が経ちますが、運営していくなかで大切にしていることはなんですか?
「自分の中での決まりごとみたいなものなのですが、年に最低一度は海外に行くようにしていて。少し違ったカルチャーに身を置くことで感じることをベースにしているんです。初めて海外に行ったときに、洋服屋でビール片手に接客されたことに衝撃を受けたことが関係しているんですけれど。この例でいうと、それが成り立つ理由は服がかっこいいからじゃないですか。そういう日本にないような風習を参考にしています。
海外ってチップの文化だったり、車の交通ルールだったり、日本にはないアバウトな部分がたくさんあるんですよ。ダウンタウンの美容室だと、お客さまがバスケの試合をずっと見ていたりとか。そのアバウトさがあることによって円滑にものごとが回ることも多いなということに気づき、あえてできるだけ自由な環境をつくることを意識しています。その方がスタッフも自分たちでジャッジするようになるし、お客さまも変に気張ることがなくリラックスしてもらえるんです。実際、用があるわけではなくても寄ってくれる人や話に来てくれる人も多いんです」
— なるほど。そうなると今後の展開としてはやはり海外も考えたりしますか?
「自分の中で欲求がないと言えば嘘にはなりますね。今後の出会いや、繋がり次第で変わると思います。海外へ行ったときにそういった視点で物事を考えたりはしますが、今はわかりません。先ほども言いましたが、趣味がコミュニケーションのツールとなりビジネスに発展していくことも少なくはないので、そういった流れによっても大きく左右しますし。今は『ドクターグルズラボラトリー』という自社オリジナルのワックスなども販売しているので、そういった自分たちの製品などの展開もゆるく広めて行きたいなとは考えているんですけどね」
- プロフィール
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Guru`s Cut & Stand
オーナー/久保 勝也(くぼ かつや)
専門学校卒業後、都内某有名美容室にてキャリアをスタート。6年間店長を勤めた後に、2009年「Guru`s Cut & Stand」オープン。Cut(美容室)とStand(モノを売る場所)をメインとし、さまざまな人が集まる店舗を生み出す。
(取材・文/QJナビ編集部)
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