美容師なら見ておきたい映画『ヴィヴィアン・ウエストウッド最強のエレガンス』×GRADUATE
―ヴィヴィアン・ウエストウッドは77歳でクリエイティブな仕事をし続けていますが、美容というクリエイティブな仕事を続けていくことについてはどう思いますか?
佐脇「ヴィヴィアン・ウエストウッドの服を買うお客さんは、彼女がどんな活動をしているかとか、何を考えているのかって必ずしも知らないと思うんです。ただヴィヴィアンの服が好きで買っている。でも、彼女が環境問題などについて勉強し続けて前進していく姿勢を、服を買う人も感じ取っていると思うんです。だからこそ、自然とお店が大きくなったり、人が集まったりしてくる。『こんな努力をしてもわからないだろう』って思ったとしても、何かしらの形でお客さんに伝わるんだと思いました。だから、美容師も見えていない部分にこだわりを持つことは必要かなって」
大原「美容師とデザイナーの共通点は年齢制限がないということですよね。作品を世に出すことに年齢は関係ないですから。映画の中で、ヴィヴィアンは11歳のときから服を作っていると言っていましたが、それをずっと続けて40歳で評価をされるようになり、77歳になってもなお続けているって相当すごい。年をとるにつれて経験が積み重なっていくから、デザイナーも美容師も年齢が上がればあがるほど、よりクリエイティブな発想ができる職業なのかなと思いました」
池田「僕は逆だと思っていて、77歳まで続けられているのはヴィヴィアン・ウエストウッドだからだと思う。例えば、日本ではコンサバティブなスタイルが受け入れられがち。コンサバティブな美容師さんは生き残れるかもしれないけど、僕らみたいなデザインベースな美容師で77歳まで続けられる人はめったにいません。逆説的になりますけど、77歳までやれている人がいたら、その人は本物だと思います。77歳までやりたいのなら、ヴィヴィアン・ウエストウッドのように、クリエイティブを追うのではなく、発信者にならないと生き残っていけないんじゃないかな」
―今回は、ヴィヴィアン・ウエストウッドのドキュメンタリー映画をご覧いただきましたが、美容師の視点で映画を見ることはありますか?
池田「『作り込んだ自然さ』に注目することはあります。場面に応じてボサボサだったり、しっかりアップしていたりとかって、そのシーンにちゃんと髪型をなじませているんだなぁって。僕たちはサスーンカットならではの、カチッとしたスタイルを提供することが多いんだけど、やりすぎ感があるというか、街に溶け込むというより、浮いた感じになりがち(笑)。髪型は大事だけど、個性を出しつつも、日常生活に溶け込むような髪型を作らないと、と最近思うようになってきましたね」
『ヴィヴィアン・ウエストウッド最強のエレガンス』
2018年12月28日(金)より角川シネマほか全国順次公開中
監督:ローナ・タッカー
出演:ヴィヴィアン・ウエストウッド、アンドレアス・クロンターラー、ケイト・モス、ナオミ・キャンベル、カリーヌ・ロワトフェルド、アンドレ・レオン・タリー
字幕翻訳:古田由紀子
配給:KADOKAWA (C)Dogwoof
2018年/イギリス/84分/原題Westwood:Punk,Icon,Activist
http://westwood-movie.jp/
GRADUATE
代表/池田充聴
国際文化理容美容専門学校 国分寺校卒。都内有名店で1年間のアシスタントを経て、渡英。ヴィダル・サスーンアカデミーの教育を受けた後、ヴィダルサスーンの美容教育コンサルタント・サスーンスクールシップ&サロンシップグローバルコーディネーターの石井曜子先生の力を借りて前途したコンセプトのもとでGRADUATEを任されることに。原宿らしいエッジィなスタイルと鮮やかなカラーリングを得意とするスタイリストとして知られている。
ディレクター/大原一晟
千葉美容専門学校卒業。専門卒業後は、都内にて3年間美容師としての経験を積む。さらなる技術向上の為、憧れていたサスーンの技術を習得するべく渡英。サスーン スクールシップ ヘアコンテストにて2位の成績を修める。サスーンアカデミーのディプロマを習得。2016年にGRADUATEに参加。
アシスタント/佐脇光
専門学校卒業後すぐに渡英し、ヴィダルサスーンアカデミーに入学。ヴィダルサスーンのピュアなベーシックを習得。2018年サスーン スクールシップ ヘアコンテスト全国6位の成績を修める。
(取材・文/須川奈津江 撮影/泉山美代子)
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