マーク・ヘイズに聞きたい10のこと 〜ヴィダル・サスーンでの40年から得たものとは〜
(6)「日本のあらゆるものが僕に影響を与えてくれている」
―日本がお好きだと聞きました。日本文化から受けた影響は?
日本! もちろんあるさ! 1983年に初めて来日したが、もう、映画「ブレードランナー」の世界にいるような気がして、見るもの全てが現実離れしているような感覚だった。
デビッド・ボウイも山本寛斎の衣装を着ていたし、幼いころ、偶然テレビで折り紙を紹介していて、夢中になってその番組を見たこともある。だって、周りの人は、誰も紙から動物を作るなんて、できなかったからね。だから日本文化はかなり前から近くにあったんだよ。
アジアの中でも日本は特異な存在だと思う。そして日本のあらゆるものが僕に影響を与えてくれているんだ。
特に、ファッションデザイナーの山本耀司と世界的なフォトグラファーのピーター・リンドバーグが撮ったファッションフォトは、それまでの常識を打ち破るものだった。日本人は、伝統的なものとモダニティを両方併せもつ、素晴らしいセンスの持ち主なんだよ。
多分、僕も日本人じゃないのかな(笑)。
(7)「原宿でも、ロンドンでもモデルハントをするよ」
―日本が大好きなマークさん。日本にきたらすることは何ですか?
うーん。答えにくい質問だね。いつも日本にくるときは、日本全国をツアーすることが多くて、10人以上のモデルと4~5人のスタイリスト、メイクアップアーティスト、カリオグラファーのチームを抱えているんだ。それに、日本人のモデルも加わって、総勢30人くらいになることもある。そうするとショーの準備などに追われて、実はそれほど身動きは取れないんだよ。
ただ、東京でショーをするときは、原宿に行ってモデルハントはするね。プロフェッショナルのモデルは、なかなか髪を切らせてもらえないから。それにモデルハントで連れてきた子のほうが、リアリティが増すし、僕は似合わせが得意だからね(笑)。それはロンドンも一緒。モデルハントは今もするよ。
この前、ショーで鹿児島に行ったときは、阿蘇山を見て、温泉にも入ったよ。日本は、地方都市もそれぞれの特徴があって面白いよね。
自分が答えたことと矛盾しているようだけど、忙しいときほど、遊びも大事だと思う。片方だけだと、飽きちゃうからね。
(8)「『コンサルティング』はアジアで最も重要なテーマになる」
―日本だけでなく、中国、韓国などのアジアの国で美容師に求められていることは?
日本もそうだけど、アジア全体で今後のキーになっていくのは「コンサルティング(日本でのカウンセリングにあたります)」だと思う。
例えばお客さまがサロンにきて、帰るまでの「旅」を、言い替えると「ストーリー」を作り上げないといけない。そうじゃないと、お客さまはあなたのところで切る意味がないからね。この業界は競争が激しい。いとも簡単に、他の誰かに奪われてしまう。
ヴィダル・サスーンでは、お客さまと美容師は対等、50:50であると説いている。つまり、アイデアの交換でもあるということ。お客さまが「こうしたい」という要望を言って、美容師はそれを理解して、何か新しいものを提案する。
しかしアジアではまだ、お客さまの要望を聞いて美容師がその通りにする、というだけのコミュニケーションが強い。
成功する美容師として生き残るためにも「コンサルティング」はアジアで最も重要なテーマになると思う。