マーク・ヘイズに聞きたい10のこと 〜ヴィダル・サスーンでの40年から得たものとは〜
(3)「ハードワークに備え、自分の枠を超えよ」
―マークさんは、21歳にしてヴィダル・サスーンのアーティスティック・ディレクターに就きましたね。若くして成功する秘訣はなんだったのでしょうか。
まずは、ハードワークに備えること。そしてよきチーム・プレイヤーであること。
繰り返すようだけど、本当に本当に大切なことなんだよ。
あと、自分の枠、つまり、自分が楽でいられる領域から外側に超えていくことも必要だと思う。
僕は、若いころすぐにクリエイティブの道に行きたいと思ってサスーンに入った。だけど、僕の旅は、実はそれほどストレートには行かなかったんだ。何をやっていても、本当の望んでいるのとは違って、あっちに行ったり、こっちに行ったり、時には後退しているかのように感じたりしたね。でも、今の状態がやりたいことに向かって進んでいないように感じても、自分の軸はブレないことが大切だ。
それに、全てが「経験」になる。君に起こっている全てをポジティブに受け入れることで、だんだん自分がやりたいことの本質に近づいていく。しかもそれはハードワークをすることで引き寄せられる、と確信して言える。
(4)「この仕事を続ける限り、日々勉強。終わりはない」
-この業界で長く働き、長くトップに君臨し続けられる秘訣は?
学んで、学んで、学ぶこと。毎日だ。毎日、熱心に働き、学ぶことで、髪のことだけじゃなく、人のこと、経済のこと、社会のことなどを知るようになる。それも、キャリアの初めだけ勉強するのではダメなんだ。この仕事を続ける限り、ずっとだ。
それに、人をよく観察して、人から学ぶということはすごく有用だね。自分の経験よりもすごい経験をしている人は世の中にたくさんいて、そういう人たちは世の中を見る目も違う。その人の見方を通じて、新しい世界を知ることができる。
(5)「美容師が表現するものは、全ての事象の集合体なんだ」
―マークさんの創作におけるインスピレーションの元はなんですか?
今も昔も、音楽は僕の大きなパートになっている。僕は12歳のときに姉に連れられて デヴィッド・ボウイのコンサートに行ったんだ。当時の音楽シーンというのは、ファッションにも強い結びつきがあって、デヴィッドは実際すごい派手な衣装をまとって、すごいバンドを従えてショーをやっていたんだ。僕の母も楽器をやっていたし、幼いころからずっと、音楽は自分の大きな部分を占めていた。アーティストとしてのインスピレーションとしては音楽に加えて、写真の影響も大きい。
僕が考えるに、美容師が表現するものは、音楽だけじゃなく、写真だけでもなく、映画とか、自然とか、全ての事象の集合体なんですよ。
だから、アーティストとしての僕は、情報の収集家という一面もある。いろんな場所で、いろんなものを見て、それを記憶にとどめておいて、何かを作るというときに引き出しからイメージを取り出していく。
サスーンというブランドは、この業界でも唯一で特有なんだ。スタイルだけでなく、そこに通じるコンセプトや、会社の哲学にまで通じてくる。僕はそのブランドの中心にいるので、より強く哲学をもっていないといけない。
ヴィダル・サスーンは1954年に創業したので、来年2019年が65周年。だから、いままさに、その代表的なショーのテーマ、構成に取り掛かっているところだ。ヴィダル・サスーンが築き遺した素晴らしい文化と、その後の美容業界への貢献を讃える、トリビュートショー
をやる予定だよ。