「私がトータルビューティを提唱する理由」 TWIGGY代表 松浦美穂スペシャルインタビュー 前編-
運命を変えた路上で目撃した素人のカット、ニールズヤードとの出会い
-ロンドンではどんなことに影響や刺激を受けましたか?
「最初に驚いたのが、ストリートカルチャー。明らかに美容師じゃないパンクスの人たちが友人の髪をストリートで切っている姿を見て、キャーって悲鳴を上げたくなるほど衝撃的でした。くるくるっと毛束をねじってすきバサミで根元に一発ざくっと入れてから毛先をチッチッチって少し切ったり、あるときはザクっと2ヶ所にすきバサミを入れたり…。それまで自分は、1ブロックずつ引き出して、決まった角度で切っていくというヴィダルサスーンの教えにならってカットしてきたわけですから、素人さんのその感覚的なカットを見て、もうこれしかない! って思いましたね。小松先生によく言われていた『硬いカット』をなんとかせねばという想いもあったし、それで、素人さんの感覚的なやり方を覚えようと研究しました」
-ここでも「真逆」な文化に直面したんですね。では、プロの現場はどうだったのでしょうか?
「ロンドンで撮影もしたかったので、『ストリーターズ』という事務所に名前を置かせてもらっていたんです。それ以前にNYでRumikoさんのアシスタントで入ったときも同じでしたが、ヘアとメイクがきっちりと分けられ、それぞれが『プロ』としての分業を全うしていましたね。“さりげないカッコよさ”は、逆に何人ものプロの手にかかってでき上がっていくんだ!! と確信しました。カメラマン、スタイリスト、ヘアドレッサー、メイクアップアーティストの分業によって完成度の高いものに仕上げっていく。一人の人が作り上げて行く「美容師」の枠より、クリエイター集団の中の「ヘアスタイリスト」としての役割にとても客観的に一人の女性像(男性像)を見ることができてよい勉強になりました。雇用も生まれますしね(笑)」
-トータルビューティーに興味を持ったのはいつ頃なのでしょうか?
「それもロンドンにいた頃ですね。ロンドンで、オーガニックスキンケアブランドのニールズヤードと出会って私の感覚が変わってきました。ニールズヤードで働いていた子と仲良くなって、ハーブをレクチャーしてもらったのがはじまりでしたね。当時のニールズヤードには、プロダクト以外に有機野菜のサラダバーなどもありました。
ロンドン時代に私は妊娠、出産を経験して、食べることや健康への関心が高まりました。そこで気がついたのは。今まで食べたもので自分の体ができあがること。ということは、髪の毛も食べるもので作られるということ。そういった気づきがきっかけで、オーガニックや、トータルビューティにも興味を持ちはじめたんです。
ロンドンにいるときからすでに、いつかニールズヤードのような”健康”の哲学を感じる”美容“を作りだして行くんだと思っていましたね! もう25年も前のことです」