悩める美容師必見! ケース別困ったお客さま対処法5選
日々さまざまな方が来店するサロン。なかには困ったお客さまに頭を悩ませたことがある美容師も多いのではないでしょうか。そこで今回は、接客におけるコミュニケーションのコツや、困ったお客さまを前にしたときのケース別対処法について、元JAL国際線客室乗務員で美容室向けの研修なども行う、秋元浩子(あきもと ひろこ)さんに伺います。
接客とはお客さまを柔らかくリードすること
-まず接客におけるコミュニケーションのコツとはどのようなものでしょうか?
コミュニケーションとは「受容力」と「伝える力」の2層構造になっています。受容力というのは、笑顔の挨拶・感謝・共感・敬いの気持ちを表し、相手に「自分は歓迎されているんだ」と感じさせられること。そして伝える力というのは、ソフトに接しながらも知識や経験をバックに伝えるべきことをきちんと伝え、提案し、一緒に問題解決をしていく姿勢を見せるということです。
困ったお客さまに接する際のポイントは、お客さまに対して「〜していただかないと当店が困るのです」ではなく、「〜していただくことでお客さまにとってもメリットがある」という旨を毅然と伝えること。接客とはお客さまを柔らかくリードすることであり、これが全ての対応の基本となるのです。
時間通りにきていただくことのメリットを挙げる
-遅刻癖のあるお客さまに対して、どのように「遅刻しないように」とお伝えしたらよいのでしょうか?
最初から「遅刻されては困るのです」と伝えるのではなく、まず「◯◯さん、いつもありがとうございます」「◯◯さんがきてくださって私も嬉しいです」といつもご利用くださることへのお礼をお伝えし、敬いの気持ちを表します。このとき、こちらの言葉が届きやすいように相手の名前を出すことがポイントです。
そして「もう少しゆったり◯◯さんとお話しながらカットをしたいので、できれば次からは時間通りにきていただけるととても助かります。この後に別のお客さまがいらっしゃらないときはよいのですが、予約が入っているときは少しスピードアップせざるを得ないので…。余裕をもって仕上げるためにもよろしくお願いします。そういえば…」と、時間通りにきていただくことでしっかりカットができるというお客さま側のメリットを挙げてお願いをします。よく遅刻してしまう人は遅刻癖を自覚しているので、ここはあまりしつこくせず、さらっとお伝えするようにしましょう。
また、こうしたお願いをお伝えするときに最初から最後まで笑顔でいるのは無表情と同じことなので、残念なときは残念な表情というように言葉と表情を合わせることも大事です。
-お客さまを前にするとためらってしまう美容師も多いですが、やはりきちんとお伝えすることが大切なのですね。
そうですね。なぜかというと、今は遅刻癖で収まっているものも、放置していると別のほころびとなって現れてくるのです。だから例え伝えにくい内容だとしても、現時点でお伝えすることがダメージを最小限でとどめ、より大きなマイナスを防ぐことにつながると考えるのです。
ノープラン問題を解決するカギは3つの「きく」
-全くのノープランで来店され、なかなか施術の方針が決められないお客さまに対してはどのように接したらよいのでしょうか?
人が言葉にできることというのは自分の考えのなかの氷山の一角に過ぎないので、一方的にお客さまの気持ちを推測し、決め打ちしてしまうのは危険なこと。むしろ「お客さまは言葉をお持ちでない」と考えていた方がいいと思います。ですから、こうしたノープランの方には、「好きな女優さんやモデルさんだったり、いつも読んでいる雑誌などはありますか?」「毎朝のセットの時間はどれくらいですか?」とまず小石を投げるように質問をし、反応を見ます。
次に思いつくまま挙げていただいた上で、プロの美容師として「私におすすめの案があるのですがよろしいですか?」とお聞きします。このとき、「◯◯さんのキュートな感じを活かすなら△△はどうでしょうか? それか、少し大人っぽさを出すのならば△△がおすすめですよ」と、お客さまに選んでいただきやすいよう、提案は2つか3つにしぼります。そして選んでいただいたものに対して、さらに具体的な質問を投げ、答えを聞いた上で提案する。
この、「訊く(話す・質問する)→聞く(反応を観察する・見る)→聴く(相手の話をしっかりと聴く)」の内容を、より具体的に狭めながら繰り返すことで、お客さまと一緒に問題解決をしていきます。
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