寺村塾#2 化学の問題集を解けば、美容師としてレベルアップできる!? -「美容化学者」かずのすけさん-(後編)

漫然と仕事をする美容師はいずれ淘汰される

 

 

編集部:かずのすけさんも寺村さんも、個人の力で道を切り開いて、情報発信することで社会に価値を提供する新しい生き方をしているように思います。

 

寺村:美容師の仕事って芸能人の仕事に近いと思っています。人気が出れば売れるけれど、売れなかったら消えていく。そういうシビアな世界なんだけれど、会社員のような気分で美容師になっちゃう子が多い気がしています。

 

かずのすけ:手に職というか、安定を求めているわけですね。今の時代では、会社に入れば安定できるという考えは古いと僕は考えていますけど…。

 

寺村:会社がいろいろとお膳立てしてくれるんです。少子化だし、美容師になりたい人も減っているから、環境を整えないと生き残れないんですよね。だけど、漫然と仕事をしている美容師はいつか淘汰されてしまうんじゃないかなと思います。

 

かずのすけ:すごくわかります。危機感を持ったほうがいい。僕はもともとは教員を目指していたのですが、業界事情があまりによくないので将来を考えて大学院に入りました。ただ、勉強して学位をとったら誰でも不自由なく生活できるかといったら、そんなことはないんですね。行き詰って自殺する人もいる世界です。それなら今はインターネットもあるしSNSも普及しているから、既存の働き方や仕事の在り方に囚われる必要はないと考えて今のスタイルを確立していきました。

 

寺村:今は個人発信の時代だし、テクノロジーを活用することで可能性が広がりますよね。

 

かずのすけ:でも楽な道ではなかったです。働き過ぎが原因で、入院も経験しています。多分、自分で新しく仕事を考えるくらいなら普通に就職したほうが楽だと思う。自分のやりたい仕事をするのは「楽しい」けれど、「楽」ではないんです。すごく大変だったからこそ、頑張らない人に共感できないというか。たとえば、超大企業のGoogleやAmazonのエンジニアのお給料が3000万円だったとするじゃないですか。そうすると、「格差だ」とか「贔屓だ」とか言い出す人が出てくる。でも、年収3000万円の人たちは最低でも会社に3000万円の利益を出しているわけです。実際はもっと多いけど。それが誰にでもできるんですかと問いたい。

 

寺村:年収とか評価っていうのは、その人自身に価値がないと上がらないですからね。

 

かずのすけ:その点、美容師さんの世界っていうのは、頑張って価値を発揮すれば自分に返ってきやすいんじゃないのかなと思います。

 

寺村:それはその通りです。でも今は、突出した人を生み出すっていうよりは、普通の子たちの底上げをどこまでするのかっていう考え方のサロンが多い気がします。

 

かずのすけ:個の力で稼ぐのって大変ですもんね。いつの時代も一握りなので。難しい問題です。

 

編集部:化学の話から、生き方や考え方の話にスライドしましたが、ここでもやはり「どういう構造になっているのかな?」と興味を持つことが大事なのですね。

 

かずのすけ:その視点があると、見えることがたくさん増えると思いますよ。企業がなんで大金を払ってこういうCMを出しているのかな、どこで利益をつくろうと考えているのかなとか、目の前の出来事がどんな構造になっているのか考えてみてほしいです。

 

 

風呂敷を広げすぎると情報密度が下がる 大事なのは数より質

 

 

寺村:そろそろ時間なので最後の質問です。かずのすけさんはどうやってファンを増やしてきたのですか。僕は8年前くらいからTwitterを使ってきました。

 

かずのすけ:僕はブログがメインで、Twitterはブログ更新の告知をする程度でしたね。一昨年から拡散に役立てています。

 

村:最近は美容のブログが増えてきてコピーされたり、内容をパクられたりとかあってどうしたもんかなと思っています。Instagramも強豪だらけだし、次は何をどうしようかなって考えている美容師さんは多いんじゃないですかね。

 

かずのすけ:僕は、フォロワーは多いほうがいいと思いますが、ありがたいことにそれなりにアクセスがあって、お客さまもつかめています。たとえば5万人フォロワーがいたら、オリジナル化粧品を、多いときで5000人が買ってくれたりするんです。

 

寺村:10%ですか。すごい数字ですよね。

 

かずのすけ:それを20%、30%に伸ばしていけたらと思っています。

 

寺村:SNSは増やさないのですか?

 

かずのすけ:僕は風呂敷を広げすぎると密度が下がると思っています。情報の種類によって適切なSNSがある。たとえば僕の情報は、Instagramにはそぐわないですよね。Facebookとも相性がよくない。YouTubeは動画の編集が大変だし。ブログを書いて、本を書いて、商品を作ってっていうだけで精一杯なので、今やっていることを極めることが基本ですね。

 

 

寺村:Instagramで10万人フォロワーがいても、予約がスカスカの美容師さんもいますからね。アテンションはできているけれど、クレジットできていないというか。

 

かずのすけ:Instagramを見る人は、そこでお金を使おうとあんまり思ってないでしょうしね。マネタイズが難しいと思います。

 

寺村:最近、広告を出して売れるようになったみたいですけれどね。

 

かずのすけ:なるほど。それでも僕は写真があまり得意ではないし、やはりブログのほうが読者のエンゲージメントも、コンバージョンも高いです。やっぱり何かの悩みを持って、情報を探して、僕のブログにたどり着いているわけですから。

 

寺村:お客さまに見つけてもらうことがこれからさらに重要になると思っています。美容師もいずれは、髪の悩みにあわせてマッチングできる時代がくるはず。今すでに電子カルテを提供している会社があるのですが、そこで集めた情報を集約して、実績がわかるようにすればお客さまがそれを見て選べます。マッチングの仕組みがどんどん浸透していくと思うんですよね。

 

かずのすけ:実力がモノを言う世界になりますね。美容師さんはたくさんいるから、その中から選ばれるのは大変。若い子たちが少し不憫です。

 

寺村:レッドオーシャンです。

 

>みんながみんな成功できるわけじゃない だからこそ戦略を練ろう

 

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