サトーマリさんの「クリエイティブの素」

 

JHAのノミネート常連で、業界誌・ヘアカタログ・一般誌からのラブコールもひっきりなしに届くクリエイティブ美容師、siikaNIKAIのサトーマリさん。前職の原宿サロン時代から、ほど良い違和感と新しさ、かわいさ、カッコよさを感じさせるスタイルを発信し続けてきました。その作風は一体どのようにして育まれてきたのでしょうか。撮影の仕事にチャレンジしたい若手美容師必見のインタビューです!

 


 

そもそも自分の作品がクリエイティブだと思っていなかった

 

 

一般紙や業界誌の仕事をはじめたころから、自分の作品がクリエイティブだなんて思っていなかったですね。言葉は悪いんですが、お仕事をいただいたからにはつくらなきゃいけないという感覚もありました。それに、前職は原宿のサロンで働いていたこともあり、原宿らしさを出したくてビビッドカラーを取り入れることを第一に考えていたんですよ。

 

美容業界からどう評価されるのかというより、一般の人が見てどう思うのかという意識が強かったですね。だからこそ、業界に関わる人たちに、私のつくったヘアスタイルが尖っているように見られていたのかもしれません。また、違う言い方をするとしたら、業界誌で求められるクリエイティブなスタイルと、一般誌で求められるリアルなスタイルの中間を表現できていたので、珍しかったのだと思います。

 

独立してからは自分から発信することを強く意識するようになりました。それまではサロンのブランドに守られていたけれど、siikaはほとんどゼロからの出発だったからです。肩肘張りすぎて自分らしさを失ってしまったからなのか、JHAに応募してもノミネートされなくなったんですよね。それまでは自分の作品は取り上げてもらえるだろうという具合に、どこか舐めていた部分もあったかもしれません。

 

「驚き」は勝利の方程式からは生まれない

 

サロンワークスタイル

 

悔しくて「来年は絶対にノミネートされる!」と周りにも言いました。私は有言実行タイプなので、言葉にしたからには絶対に達成したいし、達成できなかったらそれ以上恥ずかしいことはないと思っています。どうしたらノミネートされるのか分析するために、自分の作品を業界誌の編集さんやJHA常連の美容師さんに評価してもらったんです。そのとき多かった評価は「ヘアもメイクも全部が強い」「詰め込みすぎ」というものでした。

 

それ以降、撮影のチャンスをいただいたときは、ポイントをカットやカラーに絞るようにしました。結果として、翌年のJHAにノミネートはされました。けれど、JHAのためにつくったものだったので。「これが私の作品?」という疑う気持ちが頭の中に残ったんです。ノミネートされるという目標を達成したので、今は原点回帰して、自分がいいと思ったものをつくりたいと考えています。私は撮影でもサロンワークでも、見た人を「驚かせる」ことが好きなんです。「驚き」ってコンテストでノミネートするための勝利の方程式から生まれるものではないんですよね。

 

 

作品づくりは料理と同じように材料調達から始まる

 

サトーマリさんクリエイティブ作品

 

私は作品づくりって料理と一緒だと思っています。材料を調達して、組み合わせて、自分の味付けにしていく。たとえば、作品作りをジャムバターパンにたとえるとします。私なら食パンは買わずに、小麦粉やイースト菌は探しますね。食パンとジャムとバターを買ってジャムバターパンをつくったとしたら、誰でも同じ味のものをつくれます。それじゃダメなんですよ。

 

材料はいろんなところに転がっています。たとえば、ファッション誌の1週間コーディネートに出てくるモデルさんの日替わりヘアとか。多分、ヘアメイクさんが1週間分のアレンジを苦心しながらやっていると思うのですが、そのシルエットをアレンジではなくカットで出してみるとか。広告用にあえて奇抜につくられたタレントさんのヘアのシルエットを、自分なりに解釈して表現することもあります。ときには、絨毯のカラーが材料になることもあるんですよ。そして、材料をどうやって混ぜていくのか、朝起きてから寝るときまで、ずーっと考えています。

 

つい最近では、afloatの宮村さんがSNSで披露していたロングヘアを見てハッとしました。「光を味方につける」という宮村さんの考え方も述べられていて、なるほどなと。それと同時に、こんな素敵なロングをつくることができて、羨ましいなって思ったんです。これは作品をつくるときの材料の話とも通じるんですが、「自分にないものを真似したくなる気持ち」が作品づくりの原動力の一つになっているんですよね。

 

何をどう真似るか、どう取り入れるかというところにセンスが出る

 

サロンワークスタイル

 

私は全て自分オリジナルでつくれる人に出会ったことがありません。どんなに優れた作品も、結局は何かの真似をしていると思うんですよね。どう真似るか、どう取り入れていくかというところに、その人のセンスが出るものです。

 

たとえば、韓国で流行っているチリチリのパーマスタイルを最初に見たとき、失敗作だと勘違いしてつくったスタッフを叱ってしまったんですよ。でも、どうやらそれが流行っているとわかり、それなら自分もやらなきゃいけないと思ったんです。

 

ただし、そのままではかわいいと思えないから、もっと洗練されたシルエットにしたいと考えました。その作品をSNSで披露したら、かなり反響がありました。ただ真似をするのではなく、自分なりに咀嚼することが大事です。それに、時代が変わっても美しさの本質は変わらないと思っています。

 

 

>撮影の技術よりも先に、カットの技術を磨くことを勧めたい

 

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