圧倒的な経験値を誇る技術と知識で、ヘアカラー最前線をひた走る「酒井元樹」のクチュールテクニック。
目指したのは、オールマイティな技術を持つ美容師
「結果的にはカラーで知られるようになりましたけど、本当はカットも得意なんですよ。若い人だけでなく、シニア世代のお客さまへ提案する機会も多いです」
酒井さんは現在36歳。美容師として十分なキャリアと知識を持つ酒井さんですが、ブリーチを学び始めたのは、今から10年前、26歳のころのことでした。当時の酒井さんは、地元客をターゲットにしたコンサバが主流の大型チェーン店に勤務していたそうです。
「主な顧客層は地元の主婦で、カラーのオーダーと言えば白髪染め。だから当時は全くブリーチのことを理解していなかったんです。それでレベルアップするためにもオールマイティな技術を身に付けたいと、メーカーさんの技術講習を受けに行ったんですが、講義の途中で帰ってしまいました。なぜそんな行動をとったかというと、講習で教われば、サロンワークで通用するやり方がすぐに身に付きます。でもそれ以上でもそれ以下でもない。人から教えてもらったことだけをやっていては、自分で物事を考えたり追求できなくなってしまいます。僕なりの何かを見つけるためには、人に教わって身につけていてはダメだ、と思ったからです」
カラーの習得は独学で。たくさん失敗しなければ学べない
それから酒井さんの挑戦が始まりました。固定概念や前例にとらわれることなく、0から1を生み出すため、あらゆる手段を実践し、経験を重ねていくことで新しい手法を編み出していきました。
酒井さんは、連日サロン営業後にモデルを呼び、手探りでブリーチを覚えていきました。モデルの髪で、ブリーチとオンカラーを行い、その経過もつぶさに観察して記録。様々なメーカーの薬剤を取り寄せ、処方を変えて実践しながら色をコントロールしていくノウハウを独学で学んでいきました。
そのケーススタディを頭に叩き込んでいくことで、見えてきたことがあったそう。
「それは美容師がブリーチで失敗する本当の原因です。お客さまのなかには、失敗したカラーを直してほしいと言って来店されるのですが、その髪の状態を見たとき、担当した美容師さんの気持ちがすごく分かるし、共感してしまう。失敗の原因がわかれば、その解決方法が見えてきます」
酒井さん自身、試行錯誤でカラーを学びながら、たくさんの失敗も重ねてきました。「それが今の自分の強みになっている」と言います。
「もし正解しか知らない美容師だったら、解決する方法が分からないままです。ハイダメージのお客さまに対して、『できません』と断るしかない。僕はこれまでどんな髪でも経験してきました。だから簡単にはお断りしませんよ(笑)」
>お客さまからのオーダーは完璧に仕上げる。それが美容師としての使命