古くない、むしろ新しい。60-70年代ヘアスタイルが今なお私たちを惹き付ける理由とは?

面白いものをつくろうとするこの時代のエネルギーに惹かれる

 

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-「SAIKA」は、60-70年代をキーワードにしているそうですが、なぜその時代にフォーカスを当てているのですか?

 

60-70年代のスタイルって永遠なんですよ。2016年の今の時代であってもスタイルは古びていない。そこに僕は引かれ、テーマにしているんです。この時代のファッションアイコンは今の女性たちの憧れでもあるでしょ? たとえば、ヨーロッパを代表するセックス・シンボル、ブリジット・バルドーの色っぽい大きめウエーブ、イタリアの名女優、モニカ・ヴィッティのボリューミーなふんわりパーマ、60年代のファッションアイコンとしてあまりにも有名なイーディ・セジウィックの長めのショート、クラウディア・カルディナーレのストレートボブ……。どれも、まったく古さを感じさせないし、ものすごくおしゃれ。それに対して、80年代以降に出てきたファッションアイコンたちは消えていくんですよね。もちろん、その時代ごとにファッションアイコンは出てくるのですが、すぐに消えてしまうし、そういう人たちももとをたどれば、すべて60-70年代にインスパイヤーされているんです。

 

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ブリジット・バルドーを意識したウエーブの大きなヘアスタイル(左)

イーディ・セジウィック風のショート・ヘア(右)

 

-60-70年代のヘアの特徴とは?

 

最大の特徴は、重さが重視されていたこと。当時はブラントカットが主流でした。というよりも、軽さをつくりあげることが、その当時の技術では難しかったんです。実際にはレザーカットなどで軽さを表現することもできたのですが、ヴィダル・サスーンの出現によってハサミ1本で表現することをよしとする風潮が生まれてきたため、レザーカットは廃れてきました。 80年代に入ると、軽さを出すためにシャギーを入れるのですが、それがやりすぎになってしまって、また重さが重視されるようになった。それを今の美容師がいろいろと試行錯誤していって、カットの技術やパーマの技術の向上とともに、ここ10年くらいで、ようやく重さと軽さの調節ができるようになってきたと思います。

 

80年代以降はインディーズから発掘するという発想がなくなった

 

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70年代に流行したウルフカットを再現!

 

-その60-70年代のヘアスタイルが生まれた社会的背景は?

 

最初からメジャーではなく、つねにインディーズのところからトレンドが生まれてきたのがこの時代の特徴だと思います。マイナーなものがメジャーへと登りつめようと“もがく”。新しいものを発掘したい、面白いものをつくりたいっていう気持ちも強かった。このエネルギーに僕は惹かれ、永遠性を感じるんです。当時はみんな裕福だったり、貧乏だったりと貧富の差があった。そういう社会的背景からカルチャーって生まれてくるんですよね。

 

でも80年代以降は、そういう風潮はなくなってしまった。80年代以降は世界全体で景気がよくなってきたこともあるし、インディーズから発掘するという発想がなくなってきてしまったんです。とくに雑誌の編集長や映画のプロデューサーなど、本来そういう目利きであるべき人たちの価値観が、“新しいものを発掘する”から、“有名なもの・人”へと変わってしまいました。

 

-先ほど60-70年代のスタイルは古びていないとおっしゃっていましたが、とはいえ現代に落とし込むならば、現代的なスタイルに作り変えないといけませんよね。もし60-70年代のスタイルを現代風に作り変えるなら、気をつけるべきことはありますか?

 

たしかに60-70年代のスタイルをそのままやってしまうと、やっぱりダサくなってしまうんです。レザーカットだったり、パーマだったりを取り入れつつ、60-70年代風のヘアスタイルを作れば、今っぽいスタイルになります。60-70年代のヘアスタイルは重いのですが、重すぎるのもよくない。全体的に軽さを感じさせることも重要。まぁ、この匙加減が難しいんですけどね。

 

プロフィール
SAIKA
オーナー/齋藤 嘉弘(さいとう よしひろ)

60年代、70年代のファッションやカルチャー、音楽好きから圧倒的な支持を集める隠れ家サロン「SAIKA」のオーナー。美容師として活躍するほか、フォトグラファーやアメリカ在住の日本人ミュージシャンのプロデューサーとしても活躍。異業種の人々との交流も多い。

(取材・文/池山 章子  撮影/QJナビ編集部  写真提供/SAIKA)

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