あの人も、くすぶっていた時期を乗り越えてきた! 人気サロンの美容師が語る「逆転美容師人生」
理想と現実のギャップに撃沈…尊敬できる師と出会い、目標への道が見えるように-Dimo& 浅倉一馬さん
——これまでの美容師人生で「つまずいたな」「くすぶっていたな」と思う経験を教えてください。
新卒でACQUAに入社して1年目のころが、今から振り返ると「くすぶっていたな」と思います。そのときはまだ学生気分が抜けていませんでした。
当時の僕は「入社したらすぐにお客さまのカットができるんだ!」と思っていたんです。でも、実際は朝早く出社して掃除をし、営業の準備をし、営業中はカットではなくシャンプーばかり。そんな裏方の仕事ばかりで、想像していたキラキラした世界とのギャップがすごく大きかったんです。それで、「やらされている感」を強く抱いてしまって、仕事が楽しいと思えなくなってしまいました。
その気持ちが掃除や挨拶、身だしなみにも出てしまって。そういうのってお客さまに対して失礼なことなのに、「まだ1年目だし」と自分で妥協の理由をつけていました。そんな態度だったので、もちろん先輩にはしょっちゅう注意をされていたんです。今となってはありがたいなと思えるのですが、当時の自分は「どうしてこんなに怒られないといけないんだ!」と思ってしまって、さらに「やらされている感」が強くなってしまいました。そんな苛立ちと、毎日の忙しさで次第に疲れてきてしまって。美容師になったときに抱いていた、「自分の技術で誰かを幸せにしたい」という夢すら忘れてしまったんです。
——その状態からどのようにして“逆転”したのですか?
1社目のサロンで、現unpluggedの紺野善仙さんと武藤希実彦さんの専属アシスタントになったことがきっかけで変わっていきました。専属でついたことで、お客さまへの意識がそれまでは「誰かのお客さま」だったのが、「自分がアシスタントとして担当するお客さま」に変わったんです。ずっと楽しくないと思っていた業務も、お客さまにつながる大切な業務であるということに気付き、「やらされている感」を抱かなくなりました。
また間近で2人の仕事を見て、自分の中で「理想の美容師像」が見えました。紺野さんは、自分が「ショート特化型美容師」になるきっかけになった人です。紺野さんはお客さまの魅力を引き出すカットをする人で、初めて紺野さんのカットを見たときは衝撃を受けました。彼の作り上げるデザインが、すごくかわいかったんです。そんな紺野さんがショートを売りにしていた美容師だったので、ショートを切ることが楽しいと思っていた自分も「紺野さんのように、好きなことに特化した美容師になりたい」と思うようになりました。
武藤さんには接客の空気感や、会話のリズムを学ばせていただきました。それまでの僕の接客はマニュアル通りという感じで、きっちりお客さまと接することが正しいと思っていました。でも武藤さんの接客はもっと砕けていて、友達とまではいかないけど、近所のお兄さんのような親しさで、お客さまからもプライベートの相談をされているような距離感だったんです。それを見て「美容師とお客さまって、こういう関係でもいいんだ」と、考えが変わりました。
——その後、ご自身の生活はどのように変わりましたか?
休日の使い方が変わりました。2人の撮影に同行させてもらったり、カットしたウィッグを持って行ってみてもらったりと、自分からアクションを起こすように。あとは、スタイル撮影も自分でカメラを持って撮ったり、あるときはカメラマンさんを呼んでやったりしましたね。モデハンで外に出ていたこともあったので、今思うと本当に休みが丸1日潰れていたなと思います。でも、それでいいと思うくらい充実感で溢れていました。
——この出来事で、自分自身の考えや行動で変わったことを教えてください。
結果が出てないときって、結果が出てないことに悩むじゃないですか。でもそこで立ち止まったら成長も止まるし、「悔しかったあのときがあるから、今があるよね」ともならないので。だから今は使った時間の全てが、未来の自分につながると思って、すぐには結果が見えずとも、淡々と努力を重ねることを念頭に置いて行動するようになりました。
また何かをするとき、絶対に目標を立てるようになりました。大きなゴールを設定して、そこに至るまでにどんなことをするべきかを可視化するんです。僕はノートに目標を書き並べて、その目標に対して自分が今思うことを箇条書きで書き出しています。
そうすることで、自分がやりたいことを、今どれだけできているか実感できます。目標を追いかけているときは「あれができていない」「こうしたかった」といったネガティブなことを考えがちですが、文字に書き起こす言葉はどれも、「こうなりたい」「こうしたい」とポジティブになります。なので、落ち込んだときや壁にぶち当たったときは、そのノートを見返して過去の自分に背中を押してもらっています。
僕の目標ってすごくざっくりしたものが多くて、具体的でない分、ほぼゴールがない状況の中ベストを尽くしている感覚なんです。だから昔から達成感みたいなものはあまり感じたことがありません。でも満足したら成長はそこで止まってしまうので、これでいいんです。天井知らずで、これからも生きていきたいなと思っています。
——今、うまくいかないと悩んだり、落ち込んだりしている若手美容師さんへ、応援のメッセージをお願いします。
悩みがない人っていないと思います。僕にも悩みがあって、常に色んなことと向き合い、考えて、行動しての繰り返しです。もちろん、結果が出るかなんてやってみないと分かりません。それでも結果は、努力した人にしか出ないと思います。今が“大変”だったとしても、未来が“楽しい”に変わる瞬間がきっときます。僕は紺野さん、武藤さんに出会ってそうなったし、今でもしんどいときにはそう言い聞かせて頑張っています。共に努力し、共に壁に立ち向かい、前を向いて全力で美容師を楽しみましょう!
<プロフィール>
Dimo&
ディレクター/浅倉一馬(あさくら かずま)
1992年生まれ、千葉県出身。高山美容専門学校を卒業後、ACQUAで約9年間の経験を積んだのち、2020年に同期が立ち上げた『Dimo&』のオープニングメンバーとして参加。ショートスタイルを強みに、日々新しいスタイルに挑戦しながら発信し続けている。
>さまざまな事件が重なり、いっときは美容師を辞めることを決意したViolet 上野大輔さんが、今でも美容師として活躍しているその理由とは?