「コンサバな中にもモードな雰囲気を」 QUARRY・渡辺琢磨さんが考える“文化が生み出すヘアスタイル”とは?
皆が口にする「今っぽいスタイル」って何なの?
-先ほど話していたサイトに投稿される写真についてもう一点。現代の写真が少ない、ちょっと前の80年代から90年代の写真が多いことが気になったのですが、なぜですか?
ファッションやカルチャーが好きな俗にいう「オタク」寄りの人を対象に、お店をアピールしようとしていたら、現在のような形になりました。最近の著名人やアーティストは載せないという決まりを作っているわけではありませんが、僕含めスタッフの好みが80年代から90年代にマッチしているんですよ。
-てっきり独自路線を貫くために、“今っぽいヘアスタイル”を避けているのかと思っていました。
そもそも今っぽいスタイルって何? って僕は思っちゃうんです。ヘアカタログに載っている写真が今っぽいのかというと、僕はそうじゃないと思います。
これらの写真を投稿するようになった理由は、もう一つあるんです。それは、「最近のヘアカタログがすべて同じように見える」という、僕自身が抱いた個人的な感覚が影響しています。正直な話、どの雑誌、どのサイトを見ても、「どれもあまり変わらない」って思うんです。だったら似たようなヘアスタイルを掲載する雑誌やサイトを参考にするんではなく、別の切り口でお客さまにヘアスタイルの提案をしてみようと思い立ったんです。
それからうちのサイトでは、ちょっと前の時代の写真を投稿し始めたんです。著名人やアーティストが載った昔の雑誌や写真を切り抜いてブックを作って、お客さまにヘアカタログとしてお見せすることもあります。
-文化や時代をもとにお客さまにヘアスタイルをアプローチするって、おもしろい方法ですね。今後新たに考えている展開はありますか?
時代背景がわかりやすい作品を作っていきたいというずっと思い続けています。一つ挙げるとすれば、みんなで一つの作品を作りあげるようなことをしたいと思っていますね。簡単に言うとヘアメイクです(笑)。映画のように、各分野のプロフェッショナルが集まり、一つの作品を皆で作りあげるって昔からすごいかっこいいなと思っていて。サロンワークだけでなく、少しずつそのような外部の仕事も増やしていきたいです。
渡辺さんのフェイバリット・ムービー。左から「KIDS/キッズ」「さらば青春の光」
- プロフィール
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QUARRY
スタイリスト/渡辺 琢磨(わたなべ たくま)
茨城県水戸市出身。都内某有名サロンを経て、表参道にカルチャーを軸としたヘアスタイル提案を得意とする「QUARRY」を2015年にオープン。鋭い感覚を武器に、ファッション界隈のクリエイターから多くの支持を集める注目のオーナーでありスタイリスト。
(取材・文/苅込宗幸 写真/当山礼子)