関西の頼れるカメラマン・井関雅也さんが見た「作撮り美容師の伸びる瞬間」
関西方面で作品撮影をしている美容師なら誰もが知っているベテランカメラマンの井関雅也(いぜきまさや)さん。今年の上半期だけでも、コンテスト応募を目指した作品撮影を320スタイルも撮影したというから、その頼られ具合は半端ではありません。
1980年代から美容の撮影に関わりはじめ、美容師と、その手から紡がれる作品を、長年にわたってレンズ越しに見続けてきた井関さんだからこそ知っている、伸びる美容師の特徴を教えてもらいます。
髪の毛を極めたいと願う美容師は、いい顔をしている
—率直に伺います。作品撮影に関して伸びる美容師には特徴はありますか?
みんなそれぞれ違うんだけどやっぱり普段何を考え、何を見ているかというのが大きく関わってくるのは確かですよね。特に最近感じるのは会話をしていて、すごく反応がいい人と、なんとなく上の空の人の違い。今日は風が冷たいねとか、月が綺麗だねという話題にも反応がいい人は絶対に伸びるな、伸ばしたいなと思うことが多いですね。
—月が綺麗……?
つまりそれって自分の仕事や、自分が興味のあること以外の事象も、体でちゃんと感じられているという証。感覚的にいろんなことを感じられるというのは大きいポイントな気がします。
—好奇心の幅が広い人、ということでしょうか?
うん、好奇心はすごくあるんだけれど、最終的にそれを向ける先が美容の範囲内に集中している人のほうが伸びる気がする。写真も撮るし洋服もつくるしというように、美容以外の部分にも手を広げると美容そのものが下手になる人が多いというのを経験として感じています。
もちろん稀に全部できる人もいますよ。でもたぶん表現力ってみんな同じだけ持っていて、それを分散させちゃうとメイン分野のピークが下がっちゃう。そんなイメージかな。
—なるほど。でも美容だけに集中し過ぎると、トータルで見たときにアンバランスな作品しかつくれなかったりしませんか?
最初はアンバランスになると思いますよ。それでも髪の毛にこだわり続けていった人は、本質的なことがわかってくるように見えますね。
作品撮りの初期はだいたいみんな真似から始めますよね。その次の段階として、二手に分かれることが多い。シーンやシチュエーションにこだわる人と、髪の毛を極めたくなる人。そのうち髪の毛に向かう人は、将来的にみんないい方向にいっている気がします。打ち合わせをしてもやりたいことが具体的だし、いい顔しているんですよね。