【速報】グランプリから4位入賞者を発表!!〜QJナビDAILYフォトコン〜審査員siki伊藤竜×優勝者eve前嶋巧誠のクリエイティブ談義
発想の原点はヘアでもモデルでもなくファッション
伊藤 前嶋さんは、たしか美容師向けに服のレンタルサービスができるくらいたくさん持っているんだよね。1回の撮影でどのくらい衣装をもっていくんですか。
前嶋 そうなんです。自分で衣装レンタルサービス事業(wardrobe)を運営するぐらいファッションにはこだわりがあるので、コレクションの中から15着から20着くらいは持っていきます。1度の撮影で、衣装もヘア世界観も丸ごと変えて、3パターンくらい撮影することが多いです。ヘアを3種類撮りたいのではなく、一人のモデルで個性が異なる3人の女性像をつくるというイメージです。
伊藤 逆さまの写真で日常を表現するのは簡単ではないと思いますが、どんな手順でつくったんですか。
前嶋 まず、写真に足先まで入れることを条件にして考えました。この写真のポーズも、パッと見はナチュラルなんですが、モデルさんからするとしんどい体勢なんですよ。体の曲げ具合を、カメラマンにチェックしてもらいながらモデルさんと二人で調整しています。
腕の動きにもこだわりがあって、肘の角度が床に対して垂直になるようにしています。上下逆さに編集する事を計算に入れたポージングで、水平な床と垂直な肘との関係性を画角の中に取り入れました。
ヘアも顔にかかるバランスを考えています。ボリュームを出したのは、ワンピースとのバランスを考えてのこと。裾のボリュームが結構あるので、ヘアがそれに負けないようにしています。
伊藤 ヘアスタイリングで意識したことは?
前嶋 1回、全部内側に毛先を入れています。26mmでつむじの根元まで巻いて、クッションブラシでとかして、ちょっとほつれた雰囲気にして、ボリューム感を出しています。あとは、オイルを2、3滴、軽いものをつけたくらいです。ミディアムレングスのボリュームあるスタイルは多少ドライにしたほうがいいかなと思っています。
前嶋さんは紆余曲折を経て今に至る苦労人
伊藤 モードっぽくもありつつ、カジュアルっぽくもありつつ、モダンカジュアルをうまくついていると思います。すごく最先端だし、新しい扉を開いてやろうっていう意欲が伝わってくる作品でした。僕は、もともと前嶋さんのことは知っていたのですが、どんどん技術も上がっている感じがするので、これからがさらに楽しみですね。
前嶋 ありがとうございます! 自分は地方から東京に出てきたのですが、東京にはどの分野にもバケモノみたいな美容師がたくさんいるので、「自分はどの分野なら上を目指せるんだろう」とずっと思っていました。最近まで自信がなかったのですが、ようやく自分の強みを出せるようになってきたかなと。
もともと、僕は文化服装学院の入学を検討するくらい服が好きだったのですが、最近「あのときの尖った気持ち忘れているな」と気づいたんです。尖った気持ちと服をリンクさせたときに、自分が勝負すべきところが見えてきたというか。
「服に逃げてんだろ」って言われるかもしれないと思ったけれど、突き抜けちゃえば誰も何も言わないないだろうと。そうして今に至ります。だから、今回の受賞の連絡がきたとき、感慨深いものがありました。
伊藤 前嶋さんの気持ち、作品に乗り移っていましたよ。あらためて、おめでとうございました!
>2位・3位の受賞作品は引き算の美学とクオリティ高いチャレンジ