悩むなら読めばいい! Gallica中村飛鳥さんの美容師の悩みへ「本」の処方箋 Vol.5 【症状:スタッフが辞めてしまう】
本気で美容師をしていれば技術、モチベーション、接客、教育、経営、とさまざまなフェーズでそれぞれの壁にぶち当たるのが必然。そんな数々のつまずきや悩みを「本」で解決してきたのが自他共に認める読書美容師であるGallca(ガリカ)中村飛鳥(なかむら あすか)さん。中村さんは自分が悩むようなことは必ず先人もぶち当たって、解決策を提示していると言います。今悶々と悩んでいる問題を「本」で解決できるならそんなにいいことはありません。そこで!このシリーズでは美容師さんの陥りやすいお悩みに合わせて中村さんに「効く本」を処方していただきます。
今回のお悩みは【スタッフが辞めてしまう】。オーナーさんはもちろんマネージメントも担うスタイリストさん、そして後輩や同僚が辞めてしまって困っているという美容師さんもいるのではないでしょうか。スタッフが辞めない環境を作るにはどうすればいいのか? 是非チェックしてくださいね。
僕の経営するサロンGallicaの名前の由来は図書館から来ています。それは、私自身が沢山の本を読んで、本のおかげで、自分の人生が良くなったという思いがあるからです。
今でこそお店を経営していますが、美容師になってから独立するまでに沢山の悩みがありました。その時に役にたった本や、当時の自分に紹介したい本を、私の独立するまでのストーリーをまぜつつ、紹介していけたらと思います。
先月のコラムで紹介したのは【お客さまがつかない】というお悩みの処方箋。その解決策として、『ドリルを売るには穴を売れ』という本をご紹介しました。
マーケティングを実践した結果、なんとか状況をクリアして、売上を順調に伸ばしていったのですが、あるところまできてストップしてしまったんです。
原因は後輩が辞めていってしまい、予約が取れなくなってしまったことでした。
なんとかしないと、売上も上がらないし、サロンも自分も伸びない。
それに、もちろん後輩たちには美容師を辞めないで貰いたい。一緒にサロンを盛り上げていきたいと思ってました。ネガティヴに辞めていくのを見るのは辛いですしね。
第五のお悩み:【スタッフが辞めてしまう】
職場の後輩たちが辞めてしまって、自分も伸び悩んでしまう。そんなときに読んで欲しい本はこちら、
『嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え』
岸見 一郎/古賀 史健:著 ダイヤモンド社
です。
今回、紹介したい要点は3つです。
①人との関係を縦から横に変える
②承認欲求を否定し、自己から他者へ
③今ここを生きる
私が独立する前のことです。当時は、オーナー、店長、その下に私という、中間管理職のような立場に私はいました。
まず大事にしたいのは
①人との関係を縦から横に変える
褒めたり叱ったり、評価するのではなく、感謝しありがとうを伝えることです。
Gallicaでは、ありがとうサンドという言葉を使ってます。
よかった時は、「ありがとう!この動きはよかったわ!ありがとう!」
改善点がある場合は、
「ありがとう。もっとこうしてくれると助かるからやってみて!ありがとね!」
と感謝で言葉を挟むことを意識します。
どうしても、悪い点を探して、「もっとこうしてよ!」と言ってしまったり、
他の人と比べたり、上から目線になってしまいがち。
それを変えるためには、上司としてではなく、ともに働く仲間として、横の関係を築くことが大切です。
そのためには、自分にも意見を言って貰えるようにしないといけない。
周りが何も言わずに、自分の意見にすぐ賛同するようなら、注意が必要だと思います。
また、本書には「怒りは相手の上に立つための手段として使うもの」と書かれていますが、私自身も、怒ることは良いコミュニケーションではないと思います。
失敗した内容より、怒っている人に思考が向いてしまいますからね。
次に
②承認欲求を否定し、自己から他者へ
【人に好かれることをやる。人に貢献できることをやる。】
この二つは似ているけど違います。
前者は周りの顔色を伺うことと、
後者は自分の人への想いからスタートすること。
同じように他者に目を向け行動しているのですが、根本が違ってきます。
もちろん、相手を思って行動したことが間違う時もあります。その時は、とてもいい学びになり、時にはそれによって嫌われるようなこともあるかもしれませんが、方向性が違ったというだけなので、それはそれとして仕方がないことです。
問題なのは、みんなに好かれる為、認めてもらう為に行動することです。
他者の評価を気にしすぎているということは、自分がどう思われているか気にしている状態。つまりベクトルが内向きになっている状態です。この状態にいると、人に評価されないのならやらない、ということになりかねません。
ですので、どう貢献できるかを考えるて、ベクトルを外に向け、視野を広げることが大切なんです。
最後にとても大切なことは、
③今ここを生きる
過去にこうだったからや、思っていた未来がやってこなかったと考えすぎず、今この瞬間を楽しめればいいのかなと思います。
結果を手に入れることも大切ですが、その過程で最善をつくし楽しむことの方が意義があるのかなと、僕自身は思っています。
人は、幸せになりたいと思った時に不幸になるそうです。
なぜなら、今の状態が不幸だと思うことになるから、今の幸せを感じることができなくなってしまうんですね。
この本では、幸福感とは自分が誰かの役に立っていると”自分が思うこと”だと言っています。
だからこそ、今この瞬間に、誰かのために貢献することが、自分を最も豊かにしていく行動なのだと思います。
変われないということを、決めているのは自分自身。周りが変わるのを待つのではなく、自分自身が周りにいい影響を与えるんだと気づき、当時の僕も行動に移していきました。
元気になる後輩や、影響を受けて一生懸命やる子もちょっといたのかな? と思います。
当時辞めたスタッフが、飛鳥さんとならと、今の会社に入ってくれたりもありました!
そして、自分自身が最善を尽くしている実感があったからこそ、人の所為にすることがなくなり、気持ちが軽くなったような気がします。
変化をもたらすことによって、上司とぶつかることもありましたが、そのお陰で今の自分に繋がっています。
その後、売り上げ470万を達成するのですが、やはり周りの助けがあってこそ。お互いに助け合う。そのために、周りの人たちに何をしてあげられるか。大切なのはなにが与えられているかではなく、与えられたものをどう使うか。
みんながそう考えたら最高ですよね!でも、まずは”自分”から!
あなたと出会えて良かったと言ってくれる人がいたら最高ですね!
次回で最終話。今を一生懸命生きてるとはいえ、将来が不安。そんな時に読みたい本です。
- プロフィール
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Gallica
代表/中村 飛鳥(なかむら あすか)
長崎県出身。ハリウッドワールド専門学校卒業。都内有名サロンを2店舗経験後、2015年27歳でGallicaをオープン。顧客の顔立ちや髪質を最大限生かすヘアスタイルに定評があり、業界内外から注目を集める。サロンブランディングや人材教育にも力を入れ、現在都内7店舗、福岡1店舗。『HOT PEPPER Beauty』”GOLD Prize” 受賞。多くのセミナーの講師としても活躍。
(文/中村飛鳥 撮影/菊池麻美)
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