「美容師人生の絶頂期」をどう迎えるかは、20代にかかっている。 〜レジェンドが語る「成長する20代美容師がやるべき5つのこと」〜 第2回 DaB 八木岡聡
4つ目：「決め技」が一つあれば、それが苦境を乗り越える力になる
今この瞬間に「これだけは、他の誰よりもできる」というものを見つけておくことも大事な習慣です。ちなみにこれは、「決め技を持つ」と決めないとできないことなんですよ。得意になったものを決め技にするという考えでは見つかりません。
極端な話、毎日の掃除が誰よりも得意だとか、そういうことでもいいんです。一つでも自信があるものがあれば、人は強くなれます。ない人より絶対強いです。大変なことが起こったり、悩むようなことが起こったりしても、「決め技」を持っていることが、苦境を乗り切るための力になってくれます。反対に凹みやすい人は、「決め技」を持っていないし、誰にも負けない何かがないから、弱い感じがしますね。
すごいことじゃなくてもいいから、「自分はこれだけでは負けない」というものを持っておくと心の支えになってくれます。仕事の楽しさを見つけることにもつながると思いますよ
5つ目：デザイナーとして生きるなら、頭の中に絵を浮かべる訓練をせよ！
20代のうちに「頭の中でイメージを思い浮かべること」を身につけてほしいです。デザイナーとして生きていく上で、一番大事なんだけれど、イメージできていない美容師さんも多いんですよ。
僕自身も最初は思い浮かべることができませんでしたが、今は人の顔を見るだけで、自分が大好きなパターン、似合いそうなパターン、少し冒険的なパターンなど、5つくらいのデザインイメージが浮かんで、相手の頭にくっつけることができるんですよ。
僕はセンスとは「選ぶ力」だと思っています。だから、どれだけパターンのイメージを浮かべられるかが勝負になる。イメージを浮かべることは簡単ではないし、「浮かべられるようになる」と決めないと、一生できないんですよ。
最初に思い浮かぶのは薄いイメージかもしれないですが、だんだんと濃くして、色をつけていけるようになります。建築デザインも最初はイラストや模型をつくるところから始まるのですが、やはり頭の中にイメージがないと、イラストも模型もつくれないですよね。美容師もそれと同じです。お客さまのお顔を見て、ロングからバッサリ切るとか、そういうイメージが浮かんでいないと切ることができない。ちょっとずつ悩みながら切っていたら、信用してもらえないですよ。
じゃあ、どうしたらイメージする力を磨けるかというと、たとえば通勤電車の中でトレーニングしたらいいと思います。電車に乗ったら必ず周りの人たちをみて、イメージを浮かべてみるとか。電車に乗らないんだったら、街ですれ違った人でもいいんです。
素敵な人を見かけたら、「なぜ素敵に見えるのか」を考えてみることも大事です。反対にルックスは素敵なのにダサく見える人がいたら、その理由も考えてみる。その積み重ねをしながら、イメージする力を磨いてください。
センスというのは「選ぶ力」だと言いましたが、頭の中にイメージが湧いていなかったら選ぶことすらできません。イメージ力が上がることで、センスも磨かれていくんです。引き出しが増えれば、相手に似合う素敵なヘアを提案できるようになります。
よく「僕は誰よりも人の顔色をうかがっているよ」と言っているんですけれど、これは本当で、誰よりも顔色をうかがって、イメージを膨らませているんですよ。
まとめ：5つの習慣が美容人生を変える
20代のうちにやるべきことを5つ紹介しました。20代のうちに紹介した5つを習慣づけることで、30代、40代に訪れる絶頂期を最高の状態で迎えられるようになります。30代、40代で変わろうとしてもなかなか大変です。ぜひ、最高の20代を過ごしてください。
- プロフィール
-
八木岡聡（やぎおか さとし）
株式会社DaB（ダブ）代表／株式会社ビタミンズ代表
神奈川県出身。山野美容専門学校卒業。SHIMAにて、ヘアデザイナー、ディレクターとして活躍。1989年からNY、パリなど海外を拠点に活動を開始。1995年にDaB daikanyama hair salonを開設。ヘアデザイナーとしてサロンワークを展開する一方、インテリア及びインダストリアルデザイナーとして美容器具のプランニングやデザインでも才能を発揮。ヘアコンテストの審査、各種のセミナー、イベントなど活躍の場は幅広い。
Instagram：@dab_hair
（文／外山武史 撮影／菊池麻美）
