「人生を変えちゃう美容師」になるために、まず自分の人生を変えちゃおう! 〜レジェンドが語る「成長する20代美容師がやるべき7つのこと」〜 UMiTOS 砂原由弥
5つ目:ディープに、オタクに、得意を広げる。
好きなものや嫌いなものが分かったら、目に映るものをアレンジしてみましょう。今まで見たことのあることから、ちょっとだけズラし、アレンジする癖をつける。これを意識してトレーニングしようと思うと、結構ヘビーです。
たとえば、電車の乗り降りでいろんな人が出たり入ったりするのを眺めながら、音楽家のヘアーバランスを載せてみる。似合う人も似合わない人もいておもしろいんですけど、それがのちのち映画やCMのヘアメイクで使えることがあるんですよ。「企画的に変わった髪型にしたいんですけど」と相談されたときに、「得意です」と言えちゃう。美容師もヘアメイクアップアーティストも、イマジネーションが直結するので、目に映るものをアレンジするトレーニングは役立つと思います。
見るもの全てアレンジするのは大変なんですけれど、20代のうちにやっておくとそれが身について、30代になればわざわざ思い出さなくてもやれるようになります。デザイン思考も高くなり、自分のアイデンティティも確立されて、自分のセンスを売ることで喜ばれるから、より人生を楽しく感じられるようになるはずです。
6つ目:包容力と寛容さを理解する。
20代の若いうちは、自己肯定感を上げるために他人を否定してしまいがちです。スポーツに例えるといろんなスポーツがあったとして、「私はこっちのスポーツが好き」「なんでそんなスポーツがいいの?こっちがいいに決まってる」みたいな感じで、言い争いになったりして。冷静に考えたら別に怒らなくてもいいし、「どっちのスポーツもいいよね」で終わる話じゃないですか。実はこれ、入社後からスタイリストになるまでにありがちです。カットがうまくできないし、クリエイターにもなっていないから、自己肯定感が低いんですね。心理学で上手くなる前に正常バイアスがかかってなぜか苦しくなり否定に走るのもあります。
美容室の外でも同じです。背が高いか低いかとか、今の時代に流行る容姿かそうじゃないかなど、いろんなところで比べたり、競ったりして、自分をすり減らしているから、みんな自信がないし、他者の否定をしてしまうのかなと。
美容師はいつでも機嫌よく過ごすことが理想です。仲間とする仕事も多いから、包容力と寛容さを持って共生し、お互いにリスペクトし、伸ばし合っていきたいものですよね。
7つ目:楽観性をわざと持つ。
自分の機嫌は自分でとるとよく言いますけれど、ホルモンバランスの影響もあって、毎日ご機嫌をキープするのってそれぞれ難しいじゃないですか。自分の意思とは関係ないところで、左右されることも多いです。でも、そういう変化も楽しめるたくましさを持って美容師をやったら、人生が生きやすく、楽しく、豊かになり、さらにお客さまにも豊かさを提供できる人間になれるんじゃないかなって思います。
心理学的にも楽観性が幸福感を呼ぶとされています。私たちはハサミで人を楽しく、導く仕事。一人一人の人生まで変えちゃったり、夢を叶えちゃったりするくらいのパワーを持っています。見た目をデザインするから、世の中に影響を与えやすい職業なんだと思います。
美容師は人をどんどんいい方向に巻き込んでいくんだから、いつもハッピーな気持ちを持っていたほうがいいですよね。だから、楽観性をわざと持ち、ヘアデザインを通じてお客さまの人生をデザインし続けていって欲しいです。
- プロフィール
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UMiTOS
代表/砂原由弥(すなはらよしみ)・ちょきみ
都内の有名店店長を経て、出産を機に2008年に独立。 母親が40年間続けてきた美容室を継ぎ、千葉県南房総に「海と砂原美容室」をオープンののち、2011年青山に「UMiTOS」をスタート。サロンでは「共生教育」という独自の教育方法を実施している。ファッション雑誌、美容業界誌の表紙、CM、ドラマ、大河ドラマのポスター含め、PV、広告、G20大阪サミットヘアメイク参加、カンヌ、ヴェネチア、香港、日本アカデミーショーなどの映画祭など多方面に活躍し、サロン活動に加え芸能人のヘアメイクも数多く担当。昨年は、2026年アジア競技大会のVTRヘアメイク担当
著書に『なりたい自分は髪でつくる』(誠文堂新光社)、『はじめてのおうちカット』(アノニマ・スタジオ)、共著に『一刻もハヤクツマラナイゲンジツから脱出スル方法』(コワフュール・ド・パリ・ジャポン)、監修『傷み、うねり、パサつき髪でも変われる! 基本のケアだけでキレイな髪になれました』などがある。
(文/外山武史 撮影/菊池麻美)
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