クリエイションを極める美容師へ。寄り道をした先で見て感じたことが人生を変えるかもしれない。 〜レジェンドが語る「成長する20代美容師がやるべき6つのこと」〜 第7回 gem(ジェム) 森川丈二

6つ目:結果を焦らない。寄り道も必要。

 

 

世の中には、結果を早く求めすぎる人が多いような気がします。JHAなどのクリエイティブコンテストの審査員をしていると、ベテランの方が壇上で涙する姿などを見てグッとくることがあります。その一方で、若い方が「壇上に上がれるまで10年もかかるんですか…。」というような感想を持ったりするわけです。

 

僕からすると短い期間で簡単に結果が得られるものに味わいを感じられるとは思えないし、満たされないんじゃないかと思うんですよね。そんなに急いでどうするんだろうと思います。

 

目的地まで最短で行くことだけが素晴らしいわけではありません。寄り道をした先で見て感じたことが人生を変えるかもしれないし、目的地までの道中の素晴らしい景色に感激することもあるかもしれない。壊していく美学ということがあります。作り上げたものを一度壊してみる、そして壊したものをもう一度作り直す。そこには新たな発見と微細な違いが現れる。今はどこにでも情報が溢れているので、一旦作って壊さなくても、完成されたものを見て同じように作ってみることはできるかもしれない。でも崩れた過程の奥にある完成形と、ただ完成したものを模倣するものでは全然別物なのです。

僕が20代のころは、きっちりとスタイリングする時代でした。欧米のヘアのような柔らかさを黒髪で表現するため、フィッシュボーンや三つ編み・フィンガーウェーブを崩しまくって発表しまくりました。今ではスタイリングの定番ですよね。

そう考えると、目的地まで無駄なくこなすのはもったいない気がするんですよ。寄り道や遊びこそが完成形への近道なのかもしれません。

 

 

先日とあるレジェンドデザイナーさんからアーカイブポートレート撮影のヘアメイクの依頼がありました。面識のない方でしたが、これまでの仕事をみてきて指名を下さったとのこと。また、近年はハイブランドの世界的な展覧会のヘアメイクの仕事をしたことも。長年ヘアメイクをしてきましたが久しぶりに震えました。この年になっても震えるほどドキドキワクワクする仕事ができるのは20代のさまざまな経験があったからこそ。僕の経験は全ての人に当てはまるものではないかもしれません。ただ、美しさを極めたい、クリエイションを生涯続けて行いたい方がいたら、ぜひ参考にしていただきたいと思います。

 

プロフィール
gem代表
森川 丈二(もりかわ じょうじ)

1988年資生堂に入社。数多くのTVコマーシャル・広告のへアメークを手掛ける。様々なコレクションでのヘアメイクや雑誌・ヘアショー・セミナーなどの活動を国内外で担当。1996年には、JHAにおいての、最年少グランプリ受賞の他、最優秀ロンドン賞2回・準グランプリ2回など 数々の受賞歴を持つ。2006年4月原宿に『gem(ジェム)』をオープンし、Hair Makeupとして雑誌・広告・映画・TVCF・SHOW・セミナーなどの仕事と共にサロンワークでも活動中。2020年10月サロンを移転リニューアルし更に進化し続けている。

 

(文/外山武史 撮影/菊池麻美)

 

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