クリエイションを極める美容師へ。寄り道をした先で見て感じたことが人生を変えるかもしれない。 〜レジェンドが語る「成長する20代美容師がやるべき6つのこと」〜 第7回 gem(ジェム) 森川丈二

2つ目:好きなものだけ見るのをやめる。

 

 

インターネット検索やSNSで好きなものを探していると、似たような情報ばかりが集まるようになります。同じようなものばかり見ていたら、デザインの幅も広がっていきません。あの手この手で見せ方を変えたとしても、どこかで見たようなデザインにおさまります。

 

だからといって、海外の雑誌を見たり、映画を見たり、美術館に行けばいい、という話ではありません。もちろん、見ないよりも見たほうがいいとは思いますが、雑誌も映画も美術館も基本的に自分が見たいものだけを選ぶことになりますよね。

 

僕は猫とのくつろぎ時間にふいに流れてきた音楽やテレビ番組に興味がわいたりなど、自分が選んだわけではないけれど、琴線に触れた情報を受け止めて整理していくことも大事だと思っています。なにも特別なことをしなくてもいいんです。日常的に街を歩いているだけでも、なにかをキャッチできると思います。何が出てくるかわからないワクワク感や、目の前に出てきた得たいの知れないものを取り入れたときの驚きが、感性を揺さぶる「心のひだ」を増やしてくれるのです。

 

 

僕が20代のころは、好きとか嫌いとか関係なく、勝手にワーッと情報が入ってくる環境にいました。その中から、自分のフィルターにひっかかったものが、今につながっています。

 

ただ、街を歩いているときも、流れているテレビ番組や動画を見ているときも、ボーっとしていてはダメなんです。赤い車理論というものがあります。「今日赤い車を何台見ましたか?」と聞かれても答えられないですよね。でも、意識して数えれば覚えることができる。

 

つまり、何かステキなものを見つけようと思ってアンテナを立てていれば、キャッチできるものも増えていくわけです。意識してトレーニングを重ねて頭の中にそういうシステムができれば、あえて取りに行かなくても、意味のある情報が入ってくるようになる。このトレーニングは年を重ねてからでは厳しいと思うので、ぜひ20代のうちに身に着けてほしいです。

 

3つ目:ものごとを俯瞰して見る。

 

 

美しく咲いている花を見るのか、茎を見るのか、根っこを見るのか。その花はどんな環境で育つものなのか。俯瞰して見ることで、興味が広がります。

 

例えば、ヘアカラーも同じです。美しいカラーがどういうロジックでつくられているのか。どういう薬剤が使われているのか。どんな光の具合だと、より美しく見えるのか。自分で見て感じて、解釈することが大事です。

 

誰かの受け売りで「透明感カラー」と呼ぶのではなく、なぜそう呼ぶのか自分で考えてみる。自分の目から入ってくる情報が脳に伝達されて、色を認識しているので、人によって情報量は違うはずなんです。ある色をレッドという人がいれば、オレンジだという人もいるかもしれない。人によって見え方は変わります。

 

日本人の場合は単純にレッドだけではなく、例えば茜色(あかねいろ)と表現する色もあります。同じような色でもたくさんの違いを感じているわけですね。茜色というと、季節や情景まで浮かんできたりします。英語でも同じで、ミッドナイトブルーと聞くと、ブルーとは違う色を思い浮かべると思います。それが表現にも現れる。

 

 

20代のうちに見る力、感じる力を養うことはすごく大切です。僕が20代の頃に培った力は、今も生きています。映画のヘアメイクでは、どうしたらリアリティを感じてもらえるのか。たとえば、長く刑務所にいるシーンなのに眉毛が整っていたら、見る人は違和感を覚えてしまいます。

 

どうしたら役柄にマッチするヘアメイクができるのかさまざまな現場で何度も試行錯誤してきました。自然にと思っていても、自分の手が入ったあとを消すのはなかなかうまくはいかないものです。そうしてようやくその役にすっと馴染む髪型ができたときにあらためて気づいたんです。サロンのナチュラルヘアは、つくられたナチュラルなのだと。私はナチュラルなクリエイティブを長くやってきたつもりでしたが、この年になっても新しい発見があるから楽しく続けられています。

 

>4つ目:イメージする力を育てる。引き出しに鍵をかける。

 

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