JHA受賞作品常連カメラマン・松山優介さんが考える「センスのいい人に選ばれるセンス」

センスとは残せないし真似できない、形のないものなのかも

_DSC9422


-松山さんご自身はカメラマンとしてのセンスを磨くためにやっていることはありますか?


うーん、意識をしてやっていることはないですね。好きなことしかしてない(笑)。暇があれば喫茶店にいって本を読んでいるし、写真集や雑誌も好きなものしか見ていないですし……。でも、なんとなく自分の中にイケてるイケてないのジャッジは常にあって、仕事のときもそれに従うようにはしています。思い返せば昔はそんなジャッジできなかったですね。たぶん撮影を積み重ねていくうちに判断基準ができ上がっていき、それが僕の色になっていったんじゃないかと思います。

あとは素直にものを見られる柔軟さをなくさないようにしています。自分が撮った写真でも、人が撮った写真でも、いいものはいいと思える気持ち。そこから自分の中にいいものが入ってくる。凝り固まると進化しなくなってしまうと思います。

 

-撮る作品の幅も広いし、ライティングのバリエーションも多いですよね。インスピレーションはどういうところから得ているのですか?

 

映画や写真集も好きなのですが、活字がイメージソースになっていることが多いです。活字って不親切じゃないですか。たとえば「窓から差し込む光」と書かれていても、1人ひとり思い浮かべる光も絵もぜんぜん違う。それがおもしろいんですよ。

いいなと思うところに傍線を引いておいて、頭の中でそのイメージを膨らませていくといいライティングができることが多いんです。たとえば村上春樹の「海辺のカフカ」。月明かりに照らされてレース越しの青い服を着た少女が座っている姿を見つめる場面があるのですが、その光を表現したり。これはすごく好きなライティングになりました。

 

バックの中には必ず本が数冊入っている。

バックの中には必ず本が数冊入っている。

 

-松山さんの作品の中からそのライティングを探したくなりますね。最後に、そもそもセンスってなんだと思いますか?


難しい質問ですね。センスとは、形のないものなのかなと思います。僕自身「松山といえば」というものを確立したくて、どんな撮影でもライティングや仕上げのトーンを全部一緒にしていた時期がありました。もちろん僕にとってその時期は必要だったと思うのですが、ライティングってレシピがあるんですよ。それがバレたら誰にでもできちゃう。

 

逆に写真の構図や光の質感、たくさんの選択肢からその日のライティングを選ぶ判断は、残せないし、自分にしかできないものです。そういった何をつくっても反映されるけど形のない、誰にも真似できないものこそ、手に入れたいセンスなのかなと思います。

_DSC9414

プロフィール
カメラマン/松山優介(まつやまゆうすけ)

chiyoda-studio所属。美容専門誌をはじめ、フォトコンテストや作品撮影などで活躍。2015年JHAグランプリ(根本貴司さん・Double)、準グランプリ(上原健一さん・Rougy)、2016年JHAグランプリ(イセキリエさん・THE REMMY)など、コンテスト受賞作品の撮影も多数担当。各地で撮影セミナーなども行なう。

 

(取材・文/福田真木子)

 

 ライフマガジンの記事をもっと見る >> 

Related Contents 関連コンテンツ

Guidance 転職ガイド

Ranking ランキング