えっ、雑誌のヘアメイクとサロンワークって一緒なの?|Violet前原穂高インタビュー
カメラマンに指摘されて気づいた最高の一枚の作り方
-仮の話ですが、撮影のときに、前原さんは納得いっていないけれど、編集サイドは満足している。そのときは意見を言いますか? それとも黙っていますか?
そこは、空気を読んでいますね。現場現場で空気が違うし、自分の立ち位置も違うので。たとえば、まだ認められていないから、あまりエゴを入れないでちょっと自分のカラーを足すくらいにしておいたほうがいいという現場もあるし、ここは完全に任されている現場だから、「いや、これじゃダメなので、直させてください!」と言ってみることもあるし。それもお客さまと同じで、年配のお客さまだったらこういう風に接した方がいいとか、若いお客さまだったらこういうキャラで接客した方がいいというのが自分の経験値としてある。それと同じように、その場その場の空気を読んで対応しています。
-美容師さんはみなさん、お客さまによってキャラを変えられるんですか?
どうなんでしょうね。僕の場合は、AFLOATで過ごしたアシスタント時代にいろいろなスタイリストについていたのが大きいと思いますね。AFLOATって戦国時代みたいな感じで、すごい武将がたくさんいるんですよ(笑)。ブローのやり方も、パーマの薬剤の選定も、構成も、すべて違うんです。最初についた武将のやり方を次の武将についたときにやると、めちゃくちゃ怒られるから、各武将に合わせたやり方を覚えて真似しているうちに細分化されて、そこから自分のやり方になっていきました。
-雑誌のヘアメイクをすることで、美容師としての仕事になにか影響や変化はありましたか?
仕事を始めた当初は、サロンにくるお客さまを雑誌のヘアメイクみたいに仕上げていたんです。とても喜ばれていたんですが、お客さまが増えていくと、時間が足りなくて無理ですよね。それで、髪型そのものがかわいいというより、その子がかわいくなる髪型、動きだったり、しぐさだったりが合わさってかわいい髪型をつくるようになっていきました。
『Myベストヘア』(宝島社)のトレンドページの撮影をさせてもらうようになったときに、カメラマンの永谷知也さん(*4)に、「穂高の髪はブツ撮りみたい」「穂高以外、スプレーを使うヤツはいないよ」って指摘されたことがあったんです。それまでの僕の髪は、この角度でこう撮ってほしいというのがあって。でも、『Myベストヘア』の仕事をするようになって、現場での化学反応でできる一枚が最高だということがわかるようになってきました。そうしたら、だんだん、作る髪型も変わってきましたね。ヘアカタログなど、決めのスタイルが求められる場面もあるし、ファッションページみたいに自然な感じの髪型を撮りたい場面もある。そういう作り分けができるようになったのは、サロンワークとヘアメイクの仕事を両方やっているからなのかなと思います。そういう意味では、すべてがつながっているんだなと思います。
-三笠さんといい、永谷さんといい、前原さんが迷っている場面で導いてくれるような人との出会いがありますね。
そうですね。自分がダメになりそうなときに、絶対誰かがヒントをくれる。僕、ラッキーですよね。
*4 永谷知也氏 数多くの雑誌や広告を手がけるカメラマン
- プロフィール
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Violet
代表/前原 穂高(まえばら ほだか)
2015年5月に人気サロンAFLOATから独立し、Violetをオープン。人気モデルやタレントなどの顧客も多く、雑誌のヘアメイクやセミナー、ヘアショーなどで幅広く活躍。今冬には、名古屋店をオープン予定。
(取材・文/池山 章子 撮影/QJナビ編集部)