街の美容室vol.16 新宿 backstage.
−なぜ、歌舞伎町だったのでしょうか。
歌舞伎町は、夜の街の本場です。そこでキャバクラ、ホストクラブの最先端のセットを覚えたいという気持ちがありました。
歌舞伎町ではホストクラブ専属で働きはじめましたが、ホストクラブでの仕事ははじめてで、すべて独学で覚えました。だからぼくのセット方法は、他の「セット専門サロン」とは違っています。普通は後ろ側から髪型をつくっていくけれど、ぼくは前からつくります。
−歌舞伎町は大石さんにとって、どんな街ですか?
子どものころから新宿から数駅のところに住んでいたので、新宿は遊び場でよく自転車できていました。友だちの親御さんが働いていたり、なじみ深い場所です。ぼくが子どものころは歌舞伎町はブラックなイメージが強かったけれど、今は明るく、クリーンなイメージになりましたね。海外からの観光客も増え、昔よりも歩きやすくなったと思います。
このお店を立ち上げるとき出資してくれたホストクラブの会長は、歌舞伎町商店街振興組合にも入っていて、明るい街づくりを進めているおもしろい方です。そうした方々の働きかけもあって、歌舞伎町は夜の怖いイメージより、楽しいイメージのほうに相当変わってきていると思います。
−フリーからお店をもとうと思ったきっかけについて、教えてください。
フリーの働き方は自分にあっていたのですが、あるとき飼っていた大型犬に手を嚙まれ、1カ月ほど仕事ができなくなってしまったんです。そのときお付き合いしていた彼女がヘアメイクの仕事をしていたので、手伝ってもらってどうにか切り抜けましたが…本当に大変でした。
手に職をつけたくて美容師になったけれど、「手」そのものを失ったらおしまいだと痛感し、生活を安定させるためにお店をやりたいと思いはじめました。専属で働いていたホストクラブのオーナーに「お店をつくりたい」という話をしたら出資してくれることになり、そのホストクラブの下の階にちょうど空き部屋が出たので、そこで開店することになりました。ビルにはホストクラブが2店舗あり、今でもキャストのセットを担当させていただいています。