古着好き美容師さんが憧れる目利き人! TOROオーナー山口さんが語る「感度の高い人の心を動かす方法」
都内の古着好きの美容師さんたちがこぞって足を運ぶヴィンテージショップ「TORO Vintage Clothing」。スペシャリティショップのキュレーターや、超一流スタイリストや海外の有名デザイナーも、オーナーの山口郁子(やまぐちいくこ)さんの「目利き力」をリスペクトしています。今回はそんな山口さんの審美眼の養い方や、髪型へのこだわりについてうかがいました。
あえてインプットを制限して、閃きを開放する
私は25歳のころから、古着の仕入れと販売をしています。それから25年経ち、私は50歳になりました。25歳の自分のアイテムを選ぶ力は、今から思えば未熟だったかもしれません。でもそこから、自分の好きなことを淡々と繰り返し、インスピレーションが沸く経験をたくさんすることで、アイテムを選ぶ力が養われてきました。海外の仕入先に直接足を運び、自分の目で確かめてアイテムを選んでいるので、一つの場所にとどまるのではなく、「動き続ける」ことにも意味があったのかもしれません。
アイテムを選ぶ力を養うためには、たくさんのものを見ることが大事ですが、あえて「自分の中にインプットしよう」と“思わない”ようにしています。意識的にインプットを増やそうとすることで、自分の中から湧き出てくるものが薄くなると思うからです。
いいと言われるものを見て、心のカメラのシャッターを切って、自分の中に記録することを否定するつもりはありません。でも私は、「人の心は動かすものではなく、動かされるもの」だと思っています。意識せず、自然と自分の中に蓄積されたものが、感性の源になるのではないでしょうか。
TOROにお越しになるお客さまは、美容師さん、スタイリストさん、キュレーターさんなど、感度の高い人が多いです。そういう人たちの心を動かすには、新しい発見や感動が必要であり、今すでに世の中に出ている情報の中にはないと思います。自分以外は持ち得ない感性と、お客さまのフィーリングがあったときに、アイテムを通じて心が動かされるのではないでしょうか。
自分に合う服を選ぶのではなく、服に自分を合わせるのが面白い
他の誰かが作り、私が心を動かされたアイテムをお客さまにお渡しするので、そのアイテムが備えている素晴らしさを照れもなく伝えられるところが、この仕事の魅力の一つです。。誰がつくったもので、どこが美しいポイントなのかなど、アイテムについてお客さまとお話しながら、心を通わせることができます。自分がデザインしたものだと自画自賛になってしまうので、同じようにはできないのではないでしょうか。
TOROに並んでいるアイテムは基本的にすべて一品物であり、製造された時代も、地域も異なります。そのため、日本人の体型に合わせるのが難しく、サイズバランスも今の時代からすると違和感のあるものが少なくありません。だからこそ、「洋服に自分を合わせる力」が養えるところも古着の魅力だと思います。
そのまま着てもしっくりこないアイテムは、少し袖をまくってバランスを変えてみるなど、「どうしたら着こなせるのか?」と考えることは、とても楽しいことです。その人にしかできないコーディネートや、パーソナルな表現にもつながっていきます。
私、個人としては、この瞬間のトレンドと合っていそうで合っていない、「それってファッションなの?」という表現が好きです。たとえば、今日はチェックにチェックを重ねています。チェックはトレンドかもしれないけれど、素材やサイズ感で遊びを入れているのです。シャープさを出すためにアクセサリーでキュッと締めていますが、決まりすぎている感じは好きではないので、「抜け感」が出るように着崩すのが好みですね。
髪型はふわふわだとピリッとしないので、ていねいにブローしてピタッとおさまるようにしました。バングも、個性は出しつつも主張が強すぎない長さにしています。ワードローブと髪型の組み合わせは、外に出たときに街の空気とフィットすると思えるところが落としどころです。
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