『答えが出ているものは興味ない。人がやらないから僕がやる。』 Wille代表 志賀尚之が唯一無二のポジショニングを続ける理由
炎上したとき、ようやく見つけてもらえた感じがして嬉しかった
―アニメファンには熱心な方がいるので、大変なことはないですか。
最初は少し、批判が気になったこともあります。でも、初めて炎上したときはむしろ「ようやく僕という存在を見つけてもらえた」と思いました。誰からも注目されていなかったら、炎上もしませんから。
「ことりベージュ」でバズったときは、サロンにクレームの電話がかかってきたこともあります。関西弁で「俺のことりちゃんを再現すんなや!」みたいな感じで、まくしたてられたことを覚えています。電話がかかってくるのは困りますけれど、それでも評価してくれる人のほうが圧倒的に多かったです。今はもう批判されてもなんとも思わないですね。
ただし、サロンにきてくださるお客さまで、アニメーションのキャラクターのカラーにしたい人は、本当にキャラクターのことが大好きだからその気持ちに応えるのは簡単ではありません。一人ひとり髪質も違うから、アニメーションの世界をカラーで再現するのって難しいんですよね。それでも、お客さまは仕上がりに対してシビアですから、いつも真剣に取り組んできました。そのおかげでカラーの技術も向上したのだと思います。
人と同じところに竿を投げてもズバ抜けた結果は出ない
―作品づくりの軸になっている考え方を教えてください。
僕がサロンを立ち上げたとき、最初の1カ月はお客さまが本当にこなかったんです。もともとカラーが好きでしたが、周りには「SHIMA」や「SHACHU」などカラーが強いサロンさんがあるから、普通のカラーを推してもお客さまはきません。
釣りに例えるとしたら、みんなが釣り糸を垂らしているところにいってもあんまりうまみがないじゃないですか。竿を投げるなら、誰もまだいないところで投げたほうがいい。大きなニーズがあるところを狙うより、自分が好きなものと絡めて、ニーズが薄くても自分の力で濃くできる分野を狙うことにしたんです。それが僕の場合は、アニメーションであり、2.5Dデザインでした。
独立したのは5年前ですから、アニメーションに出てくるキャラクターの髪をつくる美容室なんてダサいと思われていたかもしれません。でも、今はアニメーションが好きだからダサいなんていう人はいませんよね。流行る前にチャンスをつかむことができたから、今があると思っています。
「ことりベージュ」を打ち出したタイミングも神がかり的でした。ラブライブ!の声優さんたちが東京ドームでライブをして、解散するところだったんです。イベントに向けて推しのヘアカラーで応援したいという人がたくさんいました。ひと月の予約が一瞬で埋まるくらい、ものすごい反響があったんですよ。独立当初から抱いていた「やるからには勝ちたい」という気持ちが実りました。
今の僕は、誰かがすでにやっていて、答えが出ているようなヘアデザインには興味がないです。最近は『鬼滅の刃』のヘアデザインも増えてきましたけれど、最初にやったのは絶対に僕だと思っています。